# --- Kifu for Windows (Pro) V6.65.52 棋譜ファイル --- 対局ID:10668 記録ID:5ed750626c540300046fd5ad 開始日時:2020/06/10 09:00 終了日時:2020/06/11 20:55 棋戦:第78期名人戦七番勝負第1局 戦型:角換わり腰掛け銀 持ち時間:9時間 消費時間:144▲539△516 場所:三重県鳥羽市「戸田家」 備考:昼休前46手目16分\n2日目昼休前72手目58分・夕休前95手目38分\n封じ手時刻:18:30<56手目>\n 先手年齢:30 後手年齢:36 図:投了 リーグ成績:▲0勝0敗△0勝0敗 振り駒:3,0,豊 先手消費時間加算:0 後手消費時間加算:0 昼食休憩:12:30〜13:30 夕食休憩:18:00〜18:30 昼休前消費時間:46手16分 手合割:平手   先手:豊島 将之名人 後手:渡辺 明三冠 先手省略名:豊島 後手省略名:渡辺明 手数----指手---------消費時間-- *豊島将之名人に渡辺明三冠(王将・棋王・棋聖)が挑戦する第78期名人戦(主催:朝日新聞社、毎日新聞社、協賛:大和証券グループ)七番勝負第1局は、6月10日・11日(水・木)にかけて三重県鳥羽市「戸田家」で行われる。持ち時間は各9時間、対局開始は9時。昼食休憩は両日とも12時30分から13時30分、2日目のみ18時から18時30分まで夕休憩がある。 *第1局の先後は振り駒で決定される。立会人は福崎文吾九段、朝日新聞副立会人は杉本昌隆八段、毎日新聞副立会人は澤田真吾六段、記録係は高田明浩三段(森信雄七段門下)が務める。 * *8時42分、渡辺が先に入室。下座についた。51分、豊島も姿を見せた。座布団を少し手前に引いてから着座していた。53分、豊島が駒箱に手を伸ばして対局準備が進められていく。 * *【将棋:朝日新聞デジタル】 *http://www.asahi.com/shougi/ *【将棋:毎日新聞】 *http://mainichi.jp/shogi/ *【大和証券グループ】 *http://www.daiwa-grp.jp/ * *(棋譜・コメント入力=玉響) *[棋譜表示の*はコメント付きの指し手。【】内は中継ブログタイトルならびにリンク。#は局後の感想が追記された指し手] 1 2六歩(27) ( 0:00/00:00:00) *8時55分には全ての駒が盤上にそろい、高田三段が絹布を広げて振り駒を行った。振った直後、両対局者は盤のほうを見つめたままだったが、記録係が結果を読み上げるまでに少し間があったからか、ほぼ同時のタイミングで記録係のほうを向いた。すると1枚駒が立っており、歩2枚、と金2枚で振り直しとなった。改めて豊島の振り歩先で行われた結果、「歩」が3枚で豊島の先手番が決まった。 *9時、立会人の福崎九段の合図で定刻通り開始された。報道陣のシャッター音が対局室に鳴り響く。 2 8四歩(83) ( 1:00/00:01:00) *1分ほど間を置いてから渡辺も△8四歩と返した。しばらくして関係者が退室する。 3 2五歩(26) ( 2:00/00:02:00) *◆豊島 将之(とよしま まさゆき)名人(竜王)◆ *1990年4月30日生まれ、愛知県一宮市出身。桐山清澄九段門下。2007年、四段。2019年、九段。棋士番号は264。 *タイトル戦登場は11回。獲得は竜王1期、名人1期、王位1期、棋聖1期の計4期。棋戦優勝は2回。 4 8五歩(84) ( 1:00/00:02:00) *◆渡辺 明(わたなべ あきら)三冠(棋王・王将・棋聖)◆ *1984年4月23日生まれ、東京都葛飾区出身。所司和晴七段門下。2000年、四段。2005年、九段。棋士番号は235。 *タイトル戦登場は35回。獲得は竜王11期(永世竜王)、王座1期、棋王8期(永世棋王)、王将4期、棋聖1期の計25期。棋戦優勝は11回。 5 7六歩(77) ( 0:00/00:02:00) *豊島は本局が今年度初対局。 *昨年度成績は39勝19敗(0.672)。 *通算成績は480勝214敗(0.692)。 6 3二金(41) ( 1:00/00:03:00) *渡辺の今年度成績は1勝1敗(0.500)。 *昨年度成績は41勝15敗(0.732)。 *通算成績は658勝332敗(0.665)。 7 7七角(88) ( 1:00/00:03:00) *両者の対戦成績は豊島11勝、渡辺16勝。直近10局の星取りは、豊島から見て古い順に○●○●●○○●○○。最近の3局は、第5期叡王戦決勝三番勝負のもの。 8 3四歩(33) ( 1:00/00:04:00) *渡辺の直近10局の成績は6勝4敗。古い対局から順に●○○●○○●○○●。 9 6八銀(79) ( 0:00/00:03:00) *豊島の直近10局の成績は6勝4敗。古い対局から順に●○●○○○●○●○。 10 7七角成(22) ( 2:00/00:06:00) *9時14分、渡辺が大きく手を伸ばして角を換えた。第1局の戦型は角換わりで確定した。 11 同 銀(68) ( 0:00/00:03:00) *名人戦・順位戦は、朝日新聞社と毎日新聞社が主催する棋戦。名人戦七番勝負は大和証券グループが協賛している。順位戦はフリークラスを除いた棋士がA級、B級1組、B級2組、C級1組、C級2組の5クラスに分かれてリーグ戦を戦う。A級同率首位の棋士が複数出た場合は同率の棋士全員によるプレーオフとなる。名人とA級優勝者が、例年4月から7月にかけて七番勝負(2日制、持ち時間は各9時間)を行う。 12 2二銀(31) ( 0:00/00:06:00) *本局の観戦記は朝日新聞が後藤元気さん、毎日新聞が椎名龍一さんが担当する。 13 4八銀(39) ( 1:00/00:04:00) *豊島は前期が名人初挑戦ながら、当時3連覇中の佐藤天彦名人を相手にストレートの4連勝で名人位を獲得。平成生まれ初の名人が誕生した。同時に、史上9人目の三冠(名人・王位・棋聖)となり、名実ともに将棋界の頂点に立った。今期は名人として初の防衛戦に臨む。 14 3三銀(22) ( 0:00/00:06:00) *渡辺は第76期A級順位戦でB級1組に降級するという苦杯を喫したが、快進撃はそこから始まった。翌年度のB級1組を無傷の12連勝でA級復帰を決めると、勢いそのままにA級順位戦でも9戦全勝。自身初となる名人への挑戦権を獲得した。 15 7八金(69) ( 2:00/00:06:00) *渡辺は2日前に開幕した第91期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負第1局を東京で戦ったばかり。タイトル戦を中一日でこなすという超ハードスケジュールだ。一方の豊島も、来週18日・19日に予定されている名人戦七番勝負第2局を戦い終えたあとには、21日に開幕する第5期叡王戦七番勝負が目前に控えている。 16 6二銀(71) ( 1:00/00:07:00) *名人戦といえば各地で桜が咲き乱れる4月に開幕されるのが通例だったが、周知の通り、新型コロナウイルス感染拡大の影響で2カ月遅れて開催される運びとなった。それに伴い、対局場も一部変更された。今後の番勝負日程は本日時点で以下の通り。 * *第2局 6月18、19日 天童ホテル(山形県天童市) *第3局 6月25、26日 東京・将棋会館(東京都渋谷区) *第4局 7月27、28日 ホテル椿山荘東京(東京都文京区) *第5局 8月7、8日 未定 *第6局 8月14、15日 未定 *第7局 8月27、28日 未定 17 4六歩(47) ( 0:00/00:06:00) *新型コロナウイルス感染拡大の防止のため、第1局の前夜祭、大盤解説会は中止となった。対局の模様は動画配信サービス「ABEMA」で視聴できる(1日目の解説はなし)。 * *【ABEMA】 *1日目(解説なし) *https://abema.tv/channels/shogi-live/slots/CwYraN8z3a4vgo * *2日目 *解説:中村太地七段、高見泰地七段 *聞き手:貞升南女流初段、飯野愛女流初段 *https://abema.tv/channels/shogi/slots/C72bHRJ8CALGFH 18 6四歩(63) ( 1:00/00:08:00) *本局の対局場である戸田家は、今年で創業190周年を迎える老舗旅館。1953年に第2期王将戦第6局が行われて以来、多くのタイトル戦が行われてきた。名人戦が開催されるのは今回で6回目。直近は第65期名人戦第3局の森内俊之名人−郷田真隆九段戦で、生粋の居飛車党である郷田九段が3手目に▲7五歩と指した印象深いシリーズだ(肩書は当時)。 * *【戸田家】 *https://www.todaya.co.jp/ * *【第65期名人戦七番勝負第3局 ▲郷田真隆九段−△森内俊之名人】 *http://member.meijinsen.jp/pay/kif/meijinsen/2007/05/07/M7/2677.html 19 4七銀(48) ( 0:00/00:06:00) *前日9日の検分は、予定より5分早い16時55分に行われた。対局場は嬉春亭(きしゅんてい)」の最上階にある「特別室」。秋篠宮殿下をはじめ、各界の著名人が宿泊した格式の高い部屋だ。本局の使用駒は静山作、錦旗書。盤は20年近く乾燥させたホウの木で作られた逸品で、どちらも1953年の第2期王将戦第6局で使用されたもの。検分は滞りなく進み、5分ほどで終了した。 20 6三銀(62) ( 1:00/00:09:00) *今回は換気のために窓の一部が開け放たれている。虫が入り込むのを防止するため、編み目の細かい網戸が設置されていた。今回の対局のために用意したものだそうだ。両対局者のお盆にも携帯サイズの除菌スプレーが配備されていた。 * *【朝日新聞デジタル|コロナ禍の将棋名人戦、幕開けを待つ老舗旅館の思い】 *https://digital.asahi.com/articles/ASN5Y4W0SN5YONFB00F.html * *【毎日新聞|第78期名人戦 あす第1局 理想のおもてなしを 戸田家スタッフ神経集中 マスク姿でも目でほほえみ】 *https://mainichi.jp/articles/20200609/ddl/k24/040/181000c 21 6八玉(59) ( 0:00/00:06:00) 22 7四歩(73) ( 0:00/00:09:00) 23 3六歩(37) ( 0:00/00:06:00) 24 4二玉(51) ( 0:00/00:09:00) *角換わりの定跡形ということもあり、早いペースで指し手が進む。 25 9六歩(97) ( 2:00/00:08:00) 26 1四歩(13) ( 2:00/00:11:00) 27 1六歩(17) ( 0:00/00:08:00) 28 7三桂(81) ( 1:00/00:12:00) *△9四歩とあいさつせず、陣形整備を急いだ。 29 9五歩(96) ( 9:00/00:17:00) 30 8一飛(82) ( 1:00/00:13:00) 31 3七桂(29) ( 1:00/00:18:00) 32 6二金(61) ( 1:00/00:14:00) 33 2九飛(28) ( 2:00/00:20:00) 34 5四銀(63) ( 2:00/00:16:00) 35 3八金(49) ( 3:00/00:23:00) *現局面、手元のデータベース上には8局収録されていた。このタイミングで▲3八金と指したのは豊島が最初で、前期の名人戦七番勝負第4局で佐藤天彦名人(肩書きは当時)に採用していた。 36 4一玉(42) ( 3:00/00:19:00) *玉を囲うなら△3一玉が自然なので、初めて見るとギョッとするが、間合いを計った意味がある。まだ3局の前例があり、そのうちの1局は第5期叡王戦決勝三番勝負第2局の▲渡辺−△豊島戦だった。今回は先後逆を持って指しているのが興味深い。 37 4五歩(46) ( 9:00/00:32:00) *▲4五歩で前例がなくなった。豊島の温めていた作戦と見てよさそうだ。ほかの前例は▲4八金(2局)、▲5六銀(1局)に分かれていた。控室の澤田六段は代えて▲4五桂、▲3五歩と積極的に仕掛ける手を候補に挙げていた。 * 38 3一玉(41) (11:00/00:30:00) *▲4五桂の仕掛けがなくなったのを見て、玉を3一に移動させた。 39 4八金(38) ( 1:00/00:33:00) *10時を回り、対局室に午前のおやつが対局室に運ばれてきた。両者が注文した品は、豊島が「フルーツ盛り合わせ」。飲み物の注文はなし。渡辺が「チョコレートケーキ、アイスコーヒー」。渡辺のケーキは本人の希望で別室に用意されているとのこと。 40 9二香(91) ( 3:00/00:33:00) *10時25分の着手。 *次に△9一飛と寄って△9四歩と仕掛けても、▲同歩△同香▲9二歩△同飛▲8三角で後手が失敗する。澤田六段は、△9二香は手待ちの意味合いが強いと話す。 *「(先手側が)研究しにくい手ですね。損になる可能性がある手で、例えば△4四歩▲同歩△同銀とすると、▲9四歩△同歩▲9三歩△同香に▲6六角が生じます。ここは先手も考えると思います」(澤田六段) *11時18分、日本将棋連盟専務理事の脇謙二八段が現地をあとにした。 41 5八玉(68) (86:00/01:59:00) *11時51分、豊島の手が伸びた。1時間26分の長考だった。着手後、席を離れる。 *「まだ駒がぶつかってないから、スローペースなんかな」と福崎九段。序盤の研究に比重が置かれている現代では、持ち時間を温存するためにも研究範囲まで飛ばすことが多い。その流れを最初に持ち込んだのも渡辺といわれている。しかし、本局はジリジリとした駆け引きが続いている。 *▲5八玉までの消費時間は、▲豊島1時間59分、△渡辺33分。 42 4四歩(43) (14:00/00:47:00) *12時を過ぎた頃、後手から開戦した。▲4四同歩△同銀▲9四歩△同歩▲9三歩△同香に▲6六角の銀香両取りの筋は依然として残ったままだが、先手玉が4筋に近づいたので成立すると踏んでいるのだろう。以下、△4一飛▲9三角成△4六歩▲3八銀(▲同銀は△4五歩)△3五歩が一例で、先手も嫌な格好だ。 43 同 歩(45) ( 0:00/01:59:00) 44 同 銀(33) ( 0:00/00:47:00) 45 5六歩(57) ( 6:00/02:05:00) *12時13分の着手。△5五銀左の進出を防いだ。 *12時30分、この局面で昼食休憩に入った。消費時間は、▲豊島2時間5分、△渡辺1時間3分。昼食注文は、豊島が「ミニ会席」、渡辺が「親子丼」。対局は13時30分から再開される。 *13時28分、渡辺が先に戻ってきた。 46 3三銀(44) (18:00/01:05:00) *13時30分、対局が再開された。渡辺は再開後も2分ほど時間を使い、△3三銀を着手。その直後、豊島も対局室に戻ってきた。後手は4筋の歩が切れたことで、△4一飛〜△4六歩という攻め筋が視野に入ってきた。 * 47 6六銀(77) (40:00/02:45:00) *14時12分の着手。▲6六銀までの消費時間は、▲豊島2時間45分、△渡辺1時間5分。 *澤田六段はここで△6五桂を候補手に挙げている。 48 2二玉(31) (30:00/01:35:00) *14時42分の着手。 *「ビシッと入ったね、堂々と。3一にいたほうがいいこともあるけど」(福崎九段) *しばらくマスクを外していた渡辺は、ランニング用と思われる紺色のマスクに付け替えた。素材までは分からないが、耳から首元まで覆われている。渡辺は体力作りの一環でジョギングを取り入れており、自身のブログでも「走ったり散歩する際はスポーツ・ランニング用のマスクを着用したい」という旨が書かれていた。通常のマスクよりも呼吸が楽なようだ。 *15時、午後のおやつの時刻となった。メニューは豊島が「赤福餅」、渡辺が「アイスコーヒー」。 *15時40分頃、控室に中西悠真奨励会三段(久保利明九段門下)が顔を見せた。三重県在住で、勉強のために訪れたとのこと。中西奨励会三段は今年1月に三段に昇段したばかりで、今月20日に開幕する三段リーグに参加する。早速、福崎九段と澤田六段の検討の輪に加わった。 49 4五歩打 (74:00/03:59:00) *▲4五歩は福崎九段が予想していた一手だ。継ぎ盤ではまず(1)△8六歩が検討された。以下▲同歩△同飛▲2四歩△同銀▲7七角△8一飛▲6五銀△3三銀▲5四銀△同歩▲3五歩△2八銀▲3四歩△2九銀成▲3三歩成という一直線の攻め合いが並べられ、「これは先手勝つな」と福崎九段。コビン攻めが強烈だ。6六の銀を釘付けにする(2)△6五桂も考えられるが、▲7七桂と交換を迫られると後手が面白くないと見られている。先手は▲4六桂など、使い道が多い。最後に消去法で(3)△3一玉が有力という見解になった。先手も▲4五歩と拠点を確保した代わりに▲4六角△6三金▲2四歩△同歩に▲2五歩の継ぎ歩攻めが消えたデメリットがある。 50 8六歩(85) (47:00/02:22:00) *控室では候補に挙がりながらも、本命視されていなかった歩突き。福崎九段は「△8六歩は(後手が)悪くなるかもしれないから度胸がいる」と話していた。 51 同 歩(87) ( 0:00/03:59:00) 52 同 飛(81) ( 0:00/02:22:00) 53 8七歩打 (16:00/04:15:00) *穏便に収めた。49手目のコメントでは(1)▲2四歩△同銀▲7七角で先手がよくなる順を記したが、検討が進められた結果、▲2四歩には△同歩が強敵ということになった。以下▲2五歩と継ぎ歩攻めをしても、次に▲2四歩と取り込んだときに△2八歩(▲同飛は△8九飛成)の手裏剣が飛んでくる。よって、新たな攻め筋として(2)▲9四歩△同歩▲9三歩(△同香は▲7一角)が検討されていた。ただ、それも△8七角▲7七金に△6九角成▲同飛△8八飛成という駒損覚悟の強襲があり、先手としては怖いところだった。 54 8二飛(86) ( 5:00/02:27:00) *「形とばかりに8一に引いてしまいそうですが、柔軟ですね」と澤田六段。△8一飛だと次に△5二金と寄せたときに▲7二角と打ち込まれるスキが生じる。 55 4六角打 (43:00/04:58:00) *17時50分頃、豊島は角を4六に据えた。八方にらみの角打ちで、次は▲6四角を狙っている。後手は現局面で△6三金が自然だが、そこで先手の指し手が注目される。 *18時20分、封じ手の時刻が近づいてきた。立会人の福崎九段は盤側でスタンバイしている。 *18時30分、福崎九段が封じ手の時刻になったことを伝えると、渡辺はすぐに次の一手を封じる意思を示した。渡辺がこの局面で消費した時間は40分。1日目の消費時間は▲豊島4時間58分、△渡辺3時間7分。封じ手は明日、11日(木)の9時に開封する。 *杉本昌八段、澤田六段、高田三段の封じ手予想は△6三金と満場一致。対抗として、杉本昌八段が△4四歩、△7五歩、澤田六段が△9四歩を挙げた。 *明けて11日、2日目の朝を迎えた。8時10分頃、記録係の高田三段が駒を1枚ずつ丁寧に磨いて対局準備を整えている。 *8時43分、1日目と同様に、渡辺が先に対局室入りした。46分、豊島も入室。49分、福崎九段の合図で記録係が1日目の指し手を読み上げていく。55分には封じ手の局面まで再現された。 56 6三金(62) (40:00/03:07:00) *「定刻となりましたので、対局を再開します」と福崎九段が告げて2日目が始まった。封じ手は関係者の間で本命とされていた△6三金だった。 57 3八金(48) ( 1:00/04:59:00) *本日8時30分からはABEMAで2日目の模様が配信されている。大盤解説のトップバッターは高見泰地七段と飯野愛女流初段。 * *■ABEMA■  *高見泰地七段>ここで先手の手番なら▲4八金と寄る人もいそうなので、ちょっと予想しづらい一手です。 58 3一玉(22) (13:00/03:20:00) *後手はなるべく最善形を崩さないよう、玉を引いて手待ちの姿勢を見せた。 59 4八金(38) ( 1:00/05:00:00) *再び4八に金を寄せた。相手の出方をうかがったのか、あるいは打開は難しいと判断しているのか。 60 2二玉(31) ( 5:00/03:25:00) *おやっ。これで2回目の同一局面になった。「千日手か」と控室では開始早々、ざわついた雰囲気に一変した。前期の名人戦開幕局では、1日目に千日手が成立していた。控室に戻ってきた福崎九段は、千日手になった場合の規定について関係者と確認している。 61 3八金(48) ( 0:00/05:00:00) *千日手は同一局面が4回現れた時点で成立する。その場合は先後を入れ替え、残り時間が引き継がれた状態で指し直しが行われる。 62 4二飛(82) (13:00/03:38:00) *「おおー」という声が控室で一様に上がる。後手の渡辺から打開した格好だ。対して▲4八金と手待ちに徹してくれば、△4五銀▲同桂△同飛とスッキリさせて、次に△5四桂を狙う順が有力になる。 *「2歩持ってるから(後手が)悪いとは思ってないんやな」(福崎) 63 3五歩(36) (20:00/05:20:00) *10時、午前のおやつが運ばれてきた。メニューは豊島が「フルーツ盛り合わせ」、渡辺が「抹茶のムースと自家製パウンドケーキ」。フルーツの甘夏は三重県尾鷲産、抹茶は伊勢茶が使用されているとのこと。 64 同 歩(34) ( 6:00/03:44:00) *昨日10日、気象庁から中国地方、近畿地方、東海地方の梅雨入りが発表された。梅雨前線の影響で今後1週間は雨の日が多くなると予想されている。本日は関東甲信でも梅雨入りする見込みだ。熱中症には気をつけたい。 * *【朝日新聞デジタル|中国・近畿・東海が梅雨入り 平年より2〜3日遅く】 *https://digital.asahi.com/articles/ASN6B3S9KN6BPTIL008.html * *【毎日新聞|中国、近畿、東海地方で梅雨入り いずれも平年と比べて遅く】 *https://mainichi.jp/articles/20200610/k00/00m/040/084000c 65 同 角(46) ( 0:00/05:20:00) *3筋の歩を交換して局面が動き出してきた。「もう千日手は95パーセントなくなった」と澤田六段。福崎九段も同調する。 66 3四歩打 ( 4:00/03:48:00) 67 6八角(35) ( 1:00/05:21:00) *当たりをなるべく避ける位置に収納した。7九まで引くのは▲6九玉〜▲7九玉と移住させる手が消えてしまう。 68 4五銀(54) (25:00/04:13:00) *「1秒も考えていなかった」と澤田六段。検討では(1)△4四歩▲同歩△4五歩、(2)△4三銀▲3六銀△5四歩▲6九玉が一例として並べられていた。 69 同 桂(37) ( 4:00/05:25:00) 70 同 飛(42) ( 8:00/04:21:00) *検討陣の間では、△4五銀(68手目)の評判がいい。杉本昌八段は現局面で(1)▲2四歩△同歩▲1五歩△同歩▲2五歩△同歩▲3六銀打や、(2)▲1五歩△同歩▲1三歩などの積極策を示したが、先手がよくするのは大変という結論になった。「(後手が)千日手にしなくてよかったと思ってるんやないかな」福崎九段。形勢自体は互角だが、指し手は後手のほうが分かりやすいという。 *10時52分、渡辺は1日目に装着していたランニング用のマスクに付け替えた。 *10時56分、福崎九段がABEMAにゲスト出演するため、控室をあとにした。 71 2四歩(25) (42:00/06:07:00) *11時31分の着手。渡辺は記録係に声をかけて棋譜に目を通している。銀歩どちらで取るか悩ましいところだ。 *12時30分、この局面で渡辺が58分使って昼食休憩に入った。消費時間は▲豊島6時間7分、△渡辺5時間19分。昼食注文は、豊島が「セレクト料理」、渡辺が「寿司会席」。「セレクト料理」は松阪牛のバラ肉を使用した牛丼をメインとした品だ。対局は13時30分から再開される。 72 同 銀(33) (60:00/05:21:00) *13時30分、対局が再開された。 73 5五銀(66) ( 2:00/06:09:00) *天王山に銀を繰り出した。次は▲4四歩とフタをして飛車を捕獲する狙いがある。 74 5四金(63) ( 2:00/05:23:00) *駒の働きを重視した。△5四歩という追い方では6三金が取り残されてしまう。 *「やられてみればという手で、こういうのは逃さんよな」と福崎九段。 * *■ABEMA■  *高見泰地七段>△5四金はさすがの一手ですね。 75 同 銀(55) (49:00/06:58:00) 76 同 歩(53) ( 0:00/05:23:00) 77 4六銀(47) ( 1:00/06:59:00) *福崎九段と澤田六段による検討では、(1)△4一飛は▲5二銀△4二飛▲5三金で後手が危険という結論になった。よって、(2)△2五飛と大決戦に出る手が検討されている。 *「怒りの鉄拳で取るしかないか」と福崎九段。△2五飛以下、▲同飛△同銀▲7七角△5五歩▲同角△4四歩▲同角△3三銀▲5三角成△5七歩▲同銀△6五桂が一例として並べられた。 78 8五飛(45) ( 6:00/05:29:00) *「△2五飛は▲7七角があったんですね。以下△5五歩は▲2六歩で飛車が捕まるので、5筋の突き捨てが入らないです」(澤田六段) 79 7七桂(89) ( 6:00/07:05:00) *飛車取りに跳ね出した。▲7七角の王手は消えるが、△6五桂の威力を緩和している。 *15時を回り、午後のおやつが運ばれてきた。メニューは豊島が「フルーツ盛り合わせ、アイスレモンティー(ガムシロップ多め)」、渡辺が「アイスコーヒー」。 80 8二飛(85) ( 7:00/05:36:00) *8一より、金にヒモをつける8二のほうが守備力が高い。一方、先手は手をこまねいていると△7五歩の桂頭攻めが飛んでくる。ゆっくりできない情勢だ。 81 4五銀打 (17:00/07:22:00) *控室で予想されていた銀打ち。単に▲4五銀は△4六歩の垂らしが嫌みだった。以下▲同角は△3五銀打▲6四角に△4六桂が厳しい。福崎九段と澤田六段の検討では、現局面から(1)△3三銀打▲4四歩△4二歩▲5七角(△7五歩の防ぎ)と、(2)△5五歩の2通りの手段が予想されている。その後、杉本昌八段が検討に加わり、(3)△4四歩を候補に挙げた。 *豊島は栄養補助食品とミネラルウォーターを手にして席を離れた。 82 5五歩(54) (43:00/06:19:00) *検討陣の予想がピシャリと当たった。対して▲5五同歩なら△5七歩のタタキが生じるし、▲5七角〜▲6六角が王手にならない。形勢はまだ難しいながら、福崎九段は「玉形がコンパクトな分、後手持ち」という見解を示している。 83 4四歩打 ( 8:00/07:30:00) *いつの間にか先手の4筋の厚みは相当なものになった。次は▲4三金や▲3四銀の擦り込みを狙っている。 84 4二歩打 ( 1:00/06:20:00) 85 5五歩(56) ( 8:00/07:38:00) *控室では△3三桂が有力と見られている。以下、(1)▲3四銀なら△5六角の金銀両取りが強烈だ。しかし、△3三桂には(2)▲4七金打が発見されて、容易ではないという結論になった。 86 7五歩(74) (27:00/06:47:00) 87 5四歩(55) ( 1:00/07:39:00) 88 7四角打 ( 1:00/06:48:00) 89 4七金打 ( 1:00/07:40:00) *継ぎ盤では△7六歩▲5三歩成(1)△5七歩▲同角△7七歩成▲6六角△3三桂打▲7七金が並べられ、先手が厚いのではないかといわれている。そこで、代替案として▲5三歩成には(2)△6五桂打を澤田六段が指摘した。歩で取れるところ、あえて桂の利きに差し出す驚愕の一手だ。 90 7六歩(75) (22:00/07:10:00) 91 5三歩成(54) ( 0:00/07:40:00) *「5三のと金に負けなし」という格言があるが、本局はどうなるか。 92 5七歩打 ( 1:00/07:11:00) 93 4八玉(58) ( 4:00/07:44:00) *取らずにかわした。5七に火種を残すことになるが、▲5六歩と角道を止める手に期待しているのかもしれない。継ぎ盤では△4七角成▲同玉△3五桂が調べられている。 94 3五桂打 (11:00/07:22:00) *急所の一撃。次は△5八歩成▲同玉△4七桂成▲同金に△3八銀がある。検討では▲3五同銀が最有力と見られており、以下△同銀▲5七角に△7七歩成の攻め合いが利くかどうかが重要だという。 *18時、この局面で豊島が38分使って夕休憩に入った。消費時間は、▲豊島8時間22分、△渡辺7時間22分。両対局者には軽食が用意されており、豊島が「ミックスサンドイッチ、オレンジジュース」、渡辺が「ホワイトチョコレートのムース(フルーツ添え)、アイスコーヒー」を注文した。対局は18時30分に再開される。 *18時25分、豊島が一足早く対局室に戻ってきた。2分ほどして渡辺も席に着いた。 95 同 銀(46) (38:00/08:22:00) *18時30分、再開から10秒ほどして豊島の手が動いた。 96 同 歩(34) ( 0:00/07:22:00) *「あ、予想が外れた」と福崎九段。検討では代えて△3五同銀が本線だった。▲3四桂と打たれるスキを自ら作るので、意外な応手だ。 * *※局後の感想※ *代えて△3五同銀とし、以下▲5七角△2六銀打と進める順も有力だった。ただし、そもそも△3五桂(94手目)が疑問だったかもしれないと渡辺はいう。 97 5六歩打 ( 1:00/08:23:00) *1手で7四角の働きを弱体化させる価値の高い一手。 98 3三桂(21) (12:00/07:34:00) *△1二玉の早逃げも考えられたが、守り駒を攻めに活用した。▲3四桂には△1三玉とかわして、すぐは寄らない格好だ。 99 3四銀(45) ( 8:00/08:31:00) *代えて▲5四銀は敵玉から遠ざかるので「迫力ゼロ」と福崎九段。豊島はこの手で残り29分になった。 100 4五銀打 ( 2:00/07:36:00) *控室では△3三桂〜△4五銀の評判がいい。福崎九段は、徐々に渡辺ペースになってきたという。 *ここまでの消費時間は、▲豊島8時間31分、△渡辺7時間36分。 101 同 銀(34) (10:00/08:41:00) 102 同 桂(33) ( 0:00/07:36:00) *だいぶ先手玉が見えてくる形になってきた。 103 3四桂打 ( 2:00/08:43:00) *局面は終盤に差しかかってきた。渡辺はここで手を止めている。玉をどこにかわすか悩ましいところだ。豊島はフェイシャルペーパーで顔を拭う。 * *※局後の感想※ *渡辺は▲3四桂に代えて▲4六銀△3四銀という順を想定しており、本譜の展開は読みの本線ではなかったという。 104 1二玉(22) (26:00/08:02:00) *19時42分、豊島の残りは10分になり、秒読みに入った。 105 1五歩(16) ( 8:00/08:51:00) *「端玉には端歩」の格言通りの寄せ。△1五同歩には▲4二と△同金▲2二銀としばる手が考えられる。 106 2五銀打 ( 3:00/08:05:00) *1筋の突き捨ては許せなかった。根元の3四桂を外すことができれば、後手玉は△2二玉〜△3三玉のルートが開ける。 * *※局後の感想※ *△2五銀打に代えて△3三銀打を豊島が指摘。渡辺は「違いがよく分かっていなかった」と話した。以下▲4二と△同金▲同桂成△同飛▲3四歩△同銀が一例の進行で、本譜の△3二同飛(110手目)とした局面と比べると、飛車の位置が4二で、後手の持ち歩が5枚(先手が歩切れになる)という違いがある。どちらがまさるかまでハッキリ結論は出されなかったが、有力だった可能性があった。 107 4二と(53) ( 0:00/08:51:00) *着手後、豊島は席を立った。 108 3四銀(25) ( 1:00/08:06:00) *△4二同金も一考の余地がありそうだったが、要の桂を外した。 109 3二と(42) ( 0:00/08:51:00) 110 同 飛(82) ( 0:00/08:06:00) 111 1四歩(15) ( 6:00/08:57:00) *△4五銀(100手目)の局面は渡辺ペースという評判だったが、豊島が盛り返したのではないかといわれている。 112 2二玉(12) (11:00/08:17:00) *澤田六段は△4六歩▲同金△3六桂を一例として挙げていたが、その順もどちらが勝ちか判断がつかないと話していた。 113 4三銀打 ( 0:00/08:57:00) *先手は自玉の手入れが難しい。4四の拠点を後ろ盾にして銀を打ち込んでいった。 114 4六歩打 ( 3:00/08:20:00) *このタイミングで歩を打ち込んだ。対して▲4六同金なら△3六桂▲3九玉に△4三銀と銀を補充するのが狙いだろう。以下▲同歩成なら△4八銀以下、先手玉に詰みがある。 115 1三歩成(14) ( 0:00/08:57:00) *△1三同香と釣り上げれば、▲3二銀成△同玉と進んだときに1二の地点がガラ空きになる。だた、△1九香成も生じているので一長一短だ。 116 同 香(11) ( 2:00/08:22:00) 117 3二銀成(43) ( 1:00/08:58:00) *※局後の感想※ *代えて▲1三同香成がまさったとされた。以下△同銀▲3二銀成△同玉▲3三歩△4一玉▲7一飛が並べられた一例。渡辺はそこで△5一香と合駒するしかないようでは、自信がないという様子だった。▲1三同香成を逃して以降は、先手に有望な順は発見されなかった。 118 同 玉(22) ( 0:00/08:22:00) 119 7二飛打 ( 0:00/08:58:00) *飛車を打ち下ろして合駒請求。後手は5筋にも4筋にも歩が利かない。 120 5二銀打 ( 3:00/08:25:00) *桂は温存。△3六桂の筋を残した。 121 3三歩打 ( 0:00/08:58:00) *焦点の歩。後手はどちらで取り返しても味が悪い。△3三同玉は▲7三飛成が王手になるし、△3三同銀は1三香のヒモがなくなる。 122 同 銀(24) ( 3:00/08:28:00) 123 4三金打 ( 0:00/08:58:00) *▲1三香成は△4七歩成▲同金△4六歩で攻め合い負けだったか、金を放り込んだ。 124 同 銀(34) ( 4:00/08:32:00) 125 同 歩成(44) ( 0:00/08:58:00) 126 同 玉(32) ( 0:00/08:32:00) 127 7三飛成(72) ( 0:00/08:58:00) 128 6三金打 ( 2:00/08:34:00) *ABEMAで解説中の中村太七段は、「△6三金は▲5五桂が見えているので指しづらい」と解説していた。 129 5五桂打 ( 0:00/08:58:00) 130 4四玉(43) ( 0:00/08:34:00) 131 6三桂成(55) ( 0:00/08:58:00) *先手玉に詰みがあってもおかしくない。 132 4七歩成(46) ( 0:00/08:34:00) 133 同 金(38) ( 0:00/08:58:00) 134 3六桂打 ( 1:00/08:35:00) *渡辺はグラスに水を注いでから△3六桂を着手した。 135 3八玉(48) ( 1:00/08:59:00) *代えて▲3六同金は△4七歩▲同玉△4六歩▲同玉△5五銀▲同歩△4七金までの詰みがあった。 136 2八金打 ( 1:00/08:36:00) 137 同 飛(29) ( 0:00/08:59:00) 138 同 桂成(36) ( 0:00/08:36:00) *渡辺はノータイムで指し進めている。豊島は首をかしげた。渡辺の名人戦初勝利が近づいている。 139 同 玉(38) ( 0:00/08:59:00) 140 3七銀打 ( 0:00/08:36:00) 141 同 金(47) ( 0:00/08:59:00) 142 同 桂成(45) ( 0:00/08:36:00) 143 同 玉(28) ( 0:00/08:59:00) 144 3六飛打 ( 0:00/08:36:00) *▲4七玉△3七金▲5七玉△5六飛までの詰み。この局面で豊島が投了を告げた。終局時刻は20時55分。消費時間は、▲豊島8時間59分、△渡辺8時間36分。第1局は渡辺が先勝。第2局は6月18、19日(木・金)に山形県天童市「天童ホテル」で行われる。 145 投了 ( 0:00/08:59:00) まで144手で後手の勝ち