# --- Kifu for Windows (Pro) V6.65.61 棋譜ファイル --- 対局ID:13481 記録ID:62415220f41739000321d31f 開始日時:2022/04/06 09:00 終了日時:2022/04/07 17:59 棋戦:第80期名人戦七番勝負第1局 戦型:矢倉 持ち時間:9時間 秒読み:60秒 消費時間:107▲444△448 場所:東京都文京区「ホテル椿山荘東京」 備考:昼休前45手目8分\n2日目昼休前69手目23分・夕休前99手目17分\n封じ手時刻:18:30<57手目>\n 先手年齢:37 後手年齢:28 図:投了 リーグ成績:▲0勝0敗△0勝0敗 振り駒:3,0,渡 先手消費時間加算:0 後手消費時間加算:0 昼食休憩:12:00〜13:00 夕食休憩:17:00〜17:30 昼休前消費時間:45手8分 手合割:平手   先手:渡辺明名人 後手:斎藤慎太郎八段 先手省略名:渡辺明 後手省略名:斎藤慎 手数----指手---------消費時間-- *渡辺明名人に斎藤慎太郎八段が挑戦する第80期名人戦七番勝負は、4月6日・7日(水・木)に東京都文京区「ホテル椿山荘東京」で開幕する。対局開始は9時、持ち時間は各9時間。1日目の封じ手は18時30分以降に行われる。昼食休憩は両日とも12時から13時。2日目のみ、17時から30分間の夕休憩が設けられる。第1局の先後は振り駒で決定する。 *立会人は青野照市九段、朝日新聞副立会人は佐々木勇気七段、毎日新聞副立会人は高崎一生七段。記録係は田中大貴三段(北島忠雄七段門下)が務める。主催紙の観戦記は青記者(朝日新聞)と関浩七段(毎日新聞)が担当する。 * *1日目の朝を迎えた。8時46分、斎藤が対局室に入室。ほどなくして渡辺も姿を見せた。50分、一礼を交わして渡辺が駒箱に手を伸ばす。 *振り駒を務めるのは大和証券グループの日比野隆司会長。青野九段が「第1局ですので振り駒を行います」と告げると、田中三段が席を立って絹布を広げる。歩を5枚、受け取った日比野会長は、小気味よい音を響かせてから絹布に散らした。渡辺の振り歩先で行われた結果は「歩」が3枚。第1局は渡辺の先手番が決まった。 * *【将棋:朝日新聞デジタル】 *http://www.asahi.com/shougi/ *【将棋:毎日新聞】 *http://mainichi.jp/shogi/ *【大和証券グループ】 *http://www.daiwa-grp.jp/ * *(棋譜・コメント入力=玉響) *[棋譜表示の*はコメント付きの指し手。#は局後の感想が追記された指し手。【】内は中継ブログタイトルならびにリンク。] 1 7六歩(77) ( 1:00/00:01:00) *9時になり、青野九段が「定刻になりましたので、渡辺名人の先手で始めてください」と告げて対局が開始された。昨日の開幕式の戦型予想では相掛かりの声が多かったが、初手▲7六歩で早くもその線はなくなった。 2 8四歩(83) ( 0:00/00:00:00) *斎藤が2手目を着手したあと、青野九段が関係者にそれとなく退室を促す。やがて、シャッター音が鳴りやんだ。戦型は矢倉か角換わりか、決定権は先手にある。青野九段は角換わりを本命に挙げていた。 * 3 6八銀(79) ( 1:00/00:02:00) *◆渡辺 明(わたなべ あきら)名人(棋王)◆ *1984年4月23日生まれ、東京都葛飾区出身。所司和晴七段門下。2000年、四段。2005年、九段。棋士番号は235。 *タイトル戦登場は41回。獲得は竜王11期(永世竜王)、名人2期、王座1期、棋王10期(永世棋王)、王将5期、棋聖1期の計30期。棋戦優勝は11回。 4 3四歩(33) ( 1:00/00:01:00) *◆斎藤 慎太郎(さいとう しんたろう)八段◆ *1993年4月21日生まれ、奈良県奈良市出身。畠山鎮八段門下。2012年、四段。2020年、八段。棋士番号は286。 *タイトル戦登場は5回。獲得は王座1期。 5 7七銀(68) ( 1:00/00:03:00) *第1局は矢倉の立ち上がりとなった。 * *渡辺は本局が今年度初対局。 *昨年度成績は23勝18敗(0.561)。 *通算成績は706勝364敗(0.660)。 6 7四歩(73) ( 3:00/00:04:00) *速攻含みの△7四歩。先手の駒組みによっては、△6二銀すら省いて急戦を仕掛ける可能性もある。 * *斎藤は本局が今年度初対局。 *昨年度成績は25勝16敗(0.610)。 *通算成績は279勝143敗(0.661)。 7 2六歩(27) ( 2:00/00:05:00) *渡辺の直近10局の成績は5勝5敗。星取りは古い順から●●●○●○○●○○。 8 7二銀(71) ( 1:00/00:05:00) *斎藤の直近10局の成績は5勝5敗。星取りは古い順から●○●○○○○●●●。 9 2五歩(26) ( 1:00/00:06:00) *名人戦・順位戦は朝日新聞社と毎日新聞社が共催する棋戦。フリークラスを除いた棋士がA級、B級1組、B級2組、C級1組、C級2組の5クラスに分かれてリーグ戦を戦う。A級同率首位の棋士が複数出た場合は同率の棋士全員によるプレーオフとなる。名人とA級優勝者が、例年4月から7月にかけて七番勝負(2日制、持ち時間は各9時間)を行う。 10 3二金(41) ( 0:00/00:05:00) *今期の名人戦七番勝負から、昼食休憩と2日目の夕休憩の時刻が変更された(右が変更後)。 * *<昼食休憩>12時30分〜13時30分→12時〜13時 * *<夕休憩>18時〜18時30分→17時〜17時30分 * *【「味が悪かった」規定変更 名人戦、今期から何が変わるのか|毎日新聞】 *https://mainichi.jp/articles/20220403/k00/00m/040/063000c 11 7八金(69) ( 1:00/00:07:00) *対局2日目の7日(木)は、現地で大盤解説会が開催される(事前申し込み制のため、すでに申し込みは締め切り)。解説会は14時開演で、終局まで行われる予定だ。解説は屋敷伸之九段、聞き手は伊藤沙恵女流名人が務める。 * *【第80期名人戦第1局大盤解説会のお知らせ】 *https://www.shogi.or.jp/event/2022/03/801.html 12 6四歩(63) ( 1:00/00:06:00) *本局の模様は、両日ともABEMAで動画中継される。通常放送のほか、コンテンツがより充実しているマルチアングルチャンネルでも放送される。 * *<1日目> *■通常放送 *https://abema.tv/channels/shogi/slots/BUpEMCmCWqRggF *■マルチアングル放送 *https://abema.tv/payperview/ENG6WE7tmrDTPm * *<2日目> *■通常放送 *https://abema.tv/channels/shogi/slots/9JEC8S1Mb3noU3 *■マルチアングル放送 *https://abema.tv/payperview/9JECAZCAeK7gCP 13 4八銀(39) ( 1:00/00:08:00) *本局に使用されている盤駒は「名人盤」、「名人駒」と呼ばれる。名人戦七番勝負の開幕局のみ使われる逸品だ。名人駒は奥野一香作、書体は宗歩好。 14 7三桂(81) ( 2:00/00:08:00) *対局場の「ホテル椿山荘東京」は、山縣有朋が「つばきやま」を購入して庭園、邸宅を作ったことに始まる。もともと椿が自生する名所で、山縣有朋は「つばきやま」を音読みして「椿山荘(ちんざんそう)」と命名した。名人戦では第66期から開幕局の対局場として使われることが恒例になっている。しかし、2年前の第78期は新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて、開幕は6月に延期された。それに伴い、その年の椿山荘での対局は、第4局に行われることになった。昨年からは例年通り、第1局の開催地になっている。 * *【ホテル椿山荘東京】 *https://hotel-chinzanso-tokyo.jp/ 15 7九角(88) ( 1:00/00:09:00) *第2局以降の日程と対局場は以下の通り。 * *第2局 4月19、20日(火、水)石川県金沢市「金沢犀川温泉川端の湯宿・滝亭」 *第3局 5月7、8日(土、日)福岡県福岡市「アゴーラ福岡山の上ホテル&スパ」 *第4局 5月19、20日(木、金)山口県山口市「名勝・山水園」 *第5局 5月28、29日(土、日)岡山県倉敷市「倉敷市芸文館」 *第6局 6月7、8日(火、水)山梨県甲府市「常磐ホテル」 *第7局 6月24、25日(金、土)山形県天童市「天童ホテル」 16 6三銀(72) ( 2:00/00:10:00) *渡辺は本シリーズに3連覇が懸かる。対する斎藤八段は2期連続の挑戦で、今回はリベンジ戦だ。以下はYouTubeチャンネル「囲碁将棋TV -朝日新聞社-」で公開された戦前のインタビュー。 * *【渡辺明名人、藤井聡太竜王が突きつけた課題「大きな問題として抱えている」〜名人戦直前インタビュー〜】 *https://www.youtube.com/watch?v=WUtVeqC7X54 * *【斎藤慎太郎八段、順位戦で佐藤康光九段と「体力で勝負できた」〜名人挑戦インタビュー〜】 *https://www.youtube.com/watch?v=3BMq1WzC-QQ 17 3六歩(37) ( 2:00/00:11:00) *▲5六歩を保留しているのが工夫で、△5四歩〜△5五歩と5筋を争点にされる展開を避けている。 18 4二銀(31) ( 2:00/00:12:00) *以下は毎日新聞の名人戦特集記事。 * *【渡辺名人 「斎藤八段の長所出ぬように」 6日開幕・名人戦へ戦略】 *https://mainichi.jp/articles/20220405/k00/00m/040/141000c *【「昨年の経験生かす」 名人戦へ斎藤慎太郎八段が見せた静かな闘志】 *https://mainichi.jp/articles/20220405/k00/00m/040/153000c *【名人戦開幕式 2期連続の顔合わせ「うれしい」 渡辺、斎藤が抱負】 *https://mainichi.jp/articles/20220405/k00/00m/040/264000c 19 3七銀(48) ( 2:00/00:13:00) *昨日5日は、16時50分過ぎに対局検分が行われた。渡辺はスーツ、ドレスシャツ、ネクタイ、ホーズが黒で統一されたコーディネートで現れた。自身がリスペクトしているというアトレティコ・マドリードのシメオネ監督が、この装いで指揮を執っていることで知られている。一方の斎藤もダーク系のスーツに身を包んでおり、無地シャツとペイズリー柄のネクタイがグレーで統一されていた。検分は滞りなく進み、5分ほどで終了した。 20 5四歩(53) ( 3:00/00:15:00) 21 6九玉(59) ( 3:00/00:16:00) 22 8五歩(84) ( 3:00/00:18:00) 23 6八角(79) ( 2:00/00:18:00) 24 3三銀(42) ( 1:00/00:19:00) 25 5六歩(57) ( 2:00/00:20:00) *2二角の利きが消えたタイミングで、角道を開けた。 * *9時50分頃、控室では高崎七段が封じ手予想クイズの賞品になる色紙を揮毫している。名人戦棋譜速報では、七番勝負の封じ手予想クイズが行われる。応募受付は、1日目の封じ手後から2日目の対局開始前まで。正解者は抽選で以下の賞品が贈られる。 * *・渡辺明名人または斎藤慎太郎八段の揮毫色紙(各対局2名様) *・第80期名人戦記念扇子(各対局5名様) *・立会人など棋士の直筆色紙(各対局複数名様) * *【七番勝負 封じ手予想|名人戦棋譜速報】 *http://www.meijinsen.jp/info_fujite.html 26 3一角(22) ( 5:00/00:24:00) *10時、午前のおやつが出された。メニューは渡辺が「ショートケーキ、コーヒー(ホット)」、斎藤が「チーズケーキ、紅茶(ホット)」。デザートはそれぞれの控室、飲み物は対局室に運ばれる。 27 4六銀(37) (10:00/00:30:00) *手元のデータベースを当たったところ、現局面の前例は2局ヒットした。1号局は▲渡辺−△広瀬章人八段戦(竜王戦昇級者決定戦2組)。 28 6五歩(64) (12:00/00:36:00) *3一角の息苦しさを解消する突き出し。前述した前例2局は、いずれも現局面から▲3五歩△同歩▲同銀△6四角▲4六角と進んで角交換になった。 29 3五歩(36) ( 3:00/00:33:00) 30 同 歩(34) ( 2:00/00:38:00) 31 同 銀(46) ( 1:00/00:34:00) 32 6四角(31) ( 0:00/00:38:00) *この一手の反撃。代えて△3四歩は▲2四歩△同歩▲同銀△同銀▲同角で、攻めの銀と守りの銀を交換されてしまう。一般的には攻めの銀を交換に持ち込んだ側が有利なことが多く、「さばけた」と表現する。 33 4六角(68) ( 0:00/00:34:00) 34 同 角(64) ( 1:00/00:39:00) 35 同 銀(35) ( 0:00/00:34:00) *▲4六同歩は△4七角の打ち込みが生じるため、銀で取り返すよりない。 36 6二金(61) ( 1:00/00:40:00) *後手は自陣右辺の充実を図る。このあとは△8一飛〜△4二玉(△5二玉)とすれば、飛車の横利きが通ってバランスのよい布陣となる。 37 7九玉(69) ( 1:00/00:35:00) *高崎七段に続き、今度は佐々木勇七段が色紙に揮毫している。1日目の午前とあって、控室では本格的に検討が行われる気配はまだない。 38 4二玉(51) (11:00/00:51:00) *この手で前例は昨年11月に行われたALSOK杯王将戦挑戦者決定リーグ戦、▲羽生善治九段−△藤井聡太三冠戦の1局に絞られた(肩書は対局当時)。前例と別れを告げた▲渡辺−△広瀬八段戦は、△4二玉に代えて△8一飛とし、以下▲9六歩△1四歩▲8八玉と進んでいた。まだ合流する可能性は十分にある。 39 9六歩(97) ( 4:00/00:39:00) 40 8一飛(82) ( 6:00/00:57:00) 41 9五歩(96) (14:00/00:53:00) *唯一の前例だった▲羽生九段−△藤井聡三冠戦は、羽生九段が▲1八角と遠見の角を放っていた。本譜の▲9五歩自体は、自玉の懐を広げてプラスに作用する可能性が高い。終盤戦を見据えて貯金しておくような感覚だろうか。 *手番の斎藤は前後に体を揺らしながら、扇子をハタハタとあおいでいる。一方の渡辺は、ややうつむいた姿勢で額に右手を当てている。 *11時10分過ぎ、前例がなくなったタイミングで、高崎七段と佐々木勇七段が継ぎ盤を挟んで駒を並べ始めた。 *▲9五歩は11時14分の着手。消費時間は、▲渡辺53分、△斎藤57分。 42 4四歩(43) (14:00/01:11:00) *「歩越し銀には歩で対抗」の格言に沿った一着。後に△4三金〜△3二玉と玉形を整える組み立てだろうか。部分的には▲羽生九段−△藤井聡三冠戦で、当時の藤井三冠が見せた駒組みと同様だ。 43 8八玉(79) (11:00/01:04:00) *矢倉城に入り込み、これで強い戦いが望めるようになった。角交換型において7九玉型と5六歩型を組み合わせるのは相性が悪い。例えば、▲3五銀と上がると△5七角が王手銀取りになってしまう。 44 6四角打 (10:00/01:21:00) *6筋の位取りを生かした角打ち。▲3五銀を阻止するだけでなく、後手から△4五歩▲3七銀△3六歩と飛車のコビンを狙う攻め筋を作っている。 *12時、この局面で渡辺が8分使って昼食休憩に入った。消費時間は、▲渡辺1時間12分、△斎藤1時間21分。昼食メニューは、渡辺が「にぎり寿司 盛り合わせ(量多め、さび抜き)」。飲み物の注文はなし。斎藤は「国産牛のハンバーガー、紅茶(アイス)」。対局は13時から再開される。 45 5八飛(28) (11:00/01:15:00) *13時、対局が再開された。渡辺は主砲を5筋に転回。次は▲5五歩が狙いだ。現局面で△4五歩に▲3七銀と撤退するのは勢いがないので、▲同銀と強く応戦する読みと思われる。以下は△1九角成▲3四歩△2二銀▲2六角△5二玉▲5五歩△同歩▲3七桂が一例。先手は香損でも、中央方面で手が作れればそれほど痛手にはならない。 46 4五歩(44) (47:00/02:08:00) *相手の主張は通さない。高崎七段は昨夜、「第1局はどのような戦型になっても真っ向勝負になる」と予想していたが、まさにそのような展開になった。 *「激しくなりそうな気がしますね。(△4五歩と)突かれても大丈夫だと思って先手は飛車を回ったと思うので」(高崎七段) * *※局後の感想※ *斎藤「(44手目△6四角の)構想自体がどうたったか。危険とは思いつつ、ちょっとほかもハッキリ分からなくて……。(△4五歩は)ちょっと無理でしたか」 *△4五歩の代替案として△4三金が挙がったが、以下▲5五歩△(1)4五歩▲同銀△5五歩と進んでみると、先手は1九角成の筋を無理なく消すことができる。そのため、後手が角を手放してまで選ぶ変化ではないとされた。 *また、穏やかに指すなら上記の▲5五歩に(2)△3二玉だが、妥協の感は否めず、得策ではないとされた。 47 同 銀(46) ( 7:00/01:22:00) *45手目のコメントで触れたように、▲3七銀では元気が出ない。いきおい取り返すところだ。問題は、後手が△1九角成と△4四歩のどちらを選ぶか。斎藤は手を止めている。 *青野九段は「ここで考えているということは、歩を取られると思っていなかったんじゃないですか」と推察している。 48 1九角成(64) (40:00/02:48:00) *△4四歩▲3四歩△4五歩▲3三歩成△同金の進行をよしとせず、一歩も引かない△1九角成を選択した。この手で消費時間は▲渡辺1時間22分、△斎藤2時間48分と倍以上の差がついた。昨夜の開幕式では、佐々木勇七段が「時間の使い方も注目ポイント。1日目の封じ手辺りで渡辺名人が時間をリードするような展開に持っていくのでは」と語っていたが、その通りになりつつある。 49 3四歩打 ( 3:00/01:25:00) *高崎七段の検討では、△2二銀▲2六角△5二玉▲5五歩△同歩▲3七桂に△5三香と徹底抗戦の姿勢を取られても、▲4四銀△4三歩▲5三銀成△同金▲5五飛で先手の攻めが続くとされた。以下△5四歩は▲4五桂がピッタリ。先に▲5五飛を決めるのがミソで、△5三同金にすぐ▲4五桂は△5四金とかわされて一筋縄ではいかない。 50 2二銀(33) ( 2:00/02:50:00) 51 2六角打 ( 4:00/01:29:00) *14時50分の着手。 *壁銀を強要してから角を放った。6二金をにらみつつ、▲3七桂の足場を作っている。 *15時、午後のおやつが出された。メニューは渡辺が「チーズケーキ、コーヒー(ホット)」、斎藤が「フルーツ盛り合わせ、緑茶(ホット)」。少しして、渡辺が先に部屋を出た。おやつが用意されている控室に向かったのかもしれない。手番の斎藤はしばらく考えていたが、15時5分に離席した。田中三段も目薬を差してクールダウンしている。 52 5二玉(42) (72:00/04:02:00) *斎藤は1時間12分の長考で玉を寄せた。▲5五歩△同歩▲3七桂に対する答えが出たか。 * *※局後の感想※ *代えて△5二金は▲3七桂△4三金左▲5五歩△同歩▲4四銀が一例で後手が芳しくないとされた。以下△3四金は▲5三歩がきつい。 53 3七桂(29) (25:00/01:54:00) *5筋の突き捨てはあと回しにした。次はシンプルに▲5五歩△同歩▲同飛が厳しい。以下△5三歩には▲5四歩△同歩▲同銀△同銀▲6二角成△同玉▲5四飛という要領で攻めが続く。 *16時47分、斎藤は残り4時間30分となった。 54 5三香打 (36:00/04:38:00) *本来なら得した香を8三にでも打ち据えて、△8六歩▲同歩△8五歩と本丸に迫りたいところ。しかし現状は▲5五歩で攻め合い負けが濃厚なので、歯を食いしばって自玉の守りに使った。一方の先手は▲4四銀が有力。対して△4三歩は▲5三銀成△同金▲4五桂でよい。以下△4四金なら▲同角△同歩に▲5三金と打ち込める。 55 4四銀(45) (49:00/02:43:00) *次は▲4五桂が絶品。5三の地点に角銀桂が集中する。 56 4三歩打 (10:00/04:48:00) *▲4五桂を阻止する手段がないので、▲5三銀成を催促して被害を最小限に食い止める。 *時刻は18時6分。封じ手の定刻まで30分を切っているが、もう少し指し手が進みそうな雰囲気だ。 *少しして、田中三段が封じ手用の局面図の作成を始めた。渡辺は羽織を着る。指す気配はもうない。 *18時30分、封じ手の定刻を迎えた。青野九段が「封じ手になりましたので、渡辺名人の手番で封じてください」と告げると、渡辺はすぐに封じる意志を示す。封じ手の考慮時間は23分。青野九段から封じ手用紙と封筒を受け取った渡辺は、記入するため別室に移動した。 *18時35分、封じ手を書き終えた渡辺が戻り、斎藤に封筒を差し出す。斎藤が署名を入れて渡辺に返し、渡辺から青野九段に封筒を預けた。1日目の消費時間は渡辺▲3時間6分、△斎藤4時間48分。対局は明日9時に再開される。 *封じ手予想は▲5三銀成で満場一致。以下△同金▲4五桂の局面で選択肢が多いようだ。それを踏まえて、立会人、副立会人、記録係に話を聞いた。 *青野九段「▲4五桂には△4四銀が普通に見えますが、ひねるなら△4四歩でしょうか」 *高崎七段「先手は攻めるだけなので、方針は分かりやすいですね。▲4五桂の局面では△4四歩、△4四銀、△4二金の3通りが考えられます」 *佐々木勇七段は▲4五桂の局面で何を指すか明言を避けたが、「▲4五桂は大きな一手ですが、1九馬を働かせるデメリットもあります」と述べた。 *田中三段は▲4五桂の局面で△4四歩を本命に挙げた。 * *8時15分頃、対局室では田中三段が駒を磨いて準備を整えている。40分、青野九段が立会席に着座した。46分、斎藤が入室。渡辺は50分に姿を見せ、信玄袋から懐中時計を取り出して時刻を確認。それから扇子を取り出し、駒箱に手を伸ばした。駒が盤上にそろい、青野九段の合図で田中三段が1日目の指し手を読み上げていく。 * *【【速報中】渡辺明名人の封じ手は?将棋名人戦、まもなく対局再開|朝日新聞】 *https://digital.asahi.com/articles/ASQ466QC6Q46UCVL05M.html * *【名人戦第1局 封じ手を高崎一生七段が予想|毎日新聞】 *https://mainichi.jp/articles/20220406/k00/00m/040/325000c 57 5三銀成(44) (23:00/03:06:00) *封じ手はこの一手と思われた▲5三銀成。両者とも△5三同金▲4五桂以降の局面を一晩、じっくり考えてきたはずだ。 58 同 金(62) ( 0:00/04:48:00) 59 4五桂(37) ( 6:00/03:12:00) *54手目のコメントで触れたように、△4四金は▲同角△同歩▲5三金で後手陣は崩壊する。 60 4四歩(43) (13:00/05:01:00) *2六角の利きを止めつつ、▲5三桂成を催促した。昨夜、青野九段は「普通(△4四銀)がダメなら△4四歩」と予想していた。田中三段が本命に挙げていた手でもある。持ち駒を温存するなら△4二金もあるが、▲5三桂成△同金に▲3二金と露骨に打ち込まれると対応が難しかったかもしれない。以下△3一銀打は▲2一金で桂がタダだ。 *ABEMAの通常放送では、対局2日目から大盤解説が行われている。トップバッターは戸辺誠七段と室谷由紀女流三段。 *戸辺七段は▲5三桂成△同玉(1)▲4六歩に△同馬と取ってくれれば▲4八香が厳しいが、▲4六歩には△3七銀があると解説している。それを踏まえて(2)▲3八飛が有力のようだ。△6九銀の割り打ちを防ぎつつ、▲4六歩に△3七銀を消して一石二鳥である。 61 5三桂成(45) (32:00/03:44:00) 62 同 玉(52) ( 0:00/05:01:00) 63 3八飛(58) ( 3:00/03:47:00) *10時、午前のおやつが出された。メニューは渡辺が「ガトーオペラ、コーヒー(ホット)」、斎藤が「フルーツ盛り合わせ、緑茶(ホット)」。 *10時30分過ぎ、ABEMAの解説者が戸辺七段から森内俊之九段にバトンタッチ。 *森内九段は「後手は2二銀の活用が課題で、いまは辛抱のとき。3四歩を除去して3三に上がれればいいが、すぐに実現する手段は難しい」と解説している。 *また、森内九段は「こういう場面では無理に逆転を狙おうとせず、謙虚に指して一手差を狙うほうが逆転に持ち込みやすい」といった旨を話している。少なくとも、現状は後手がハッキリ苦しいようだ。 64 6四馬(19) (45:00/05:46:00) *攻防の要所に馬を引きつけた。とはいえ、(1)▲3七角で馬を消される形なので不安感は拭えない。一方の先手としては、(2)▲4八金と上がって後の▲3七角△同馬に▲同金と形よく取り返せるようにするか、(3)▲4六歩と後手玉に直接、プレッシャーをかけるか。 65 4六歩(47) (14:00/04:01:00) *後手玉めがけて歩を突き出した。次は▲4五歩のコビン攻めが厳しい。また、現局面で△4六同馬は▲4八香がある。 66 1四桂打 (12:00/05:58:00) *斎藤は辺地に桂を打ちつけた。浮かんだとしても指すのをためらいそうな一手だが、それだけ角の利きを消すことが急務だったようだ。渡辺は窓外のほうに目をやり、小さく首をかしげた。 *11時30分頃、控室に顔を出していた伊藤女流名人が、佐々木勇七段と継ぎ盤を挟んで検討を始めた。2人は奨励会同期で、斎藤と同じく平成16年度に奨励会に入会した間柄だ。伊藤女流名人は、このあと14時から師匠の屋敷九段とともに現地大盤解説会に出演する。 67 3七角(26) (22:00/04:23:00) *飛車のヒモがつく位置に引いて、▲4五歩の決戦を狙った。代えて▲3五角や▲1五角は、△2六銀で角の逃げ場がない。 68 3六銀打 ( 0:00/05:58:00) *11時36分の着手。 *銀の重しを載せて▲4五歩を封じた。控室では高崎七段と佐々木勇七段が継ぎ盤を挟み、青野九段が隣でそれを眺めている。検討では、▲1九角△4七銀不成▲3九飛△5六銀成▲5九香△4七成銀▲4五歩△3七歩▲5八金が並べられた。最後の▲5八金が遊び駒を活用して「味がいい」と佐々木勇七段。 *12時、この局面で渡辺が23分使って昼食休憩に入った。消費時間は、▲渡辺4時間46分、△斎藤5時間58分。昼食メニューは、渡辺が「カレーライス(ビーフ)」、斎藤が「にぎり寿司盛り合わせ、緑茶(ホット)」。対局は13時から再開される。 *ABEMAでは新たに飯野愛女流初段が聞き手として登場。森内九段と初手から振り返っている。 *13時、対局が再開されたが、渡辺は引き続き時間を使っている。青野九段は「迷ってますね」とポツリ。▲1九角以外だと▲1五角が候補になりそうだが、以下△4六馬▲4八香△3五馬▲4六金に△2五馬と角取りに逃げられるのでスッキリしない。 69 1九角(37) (48:00/05:11:00) *48分とまとまった時間を使って角を引いた。△4七銀不成に▲3九飛とすれば再び角にヒモがつくので、再び▲4五歩と突く準備が整う。 70 4七銀(36) ( 5:00/06:03:00) *不成で入るのがポイント。代えて△4七銀成▲3九飛△4六成銀は、▲4七歩△同成銀▲6四角で後手が収拾困難に陥る。 71 3九飛(38) (14:00/05:25:00) 72 5六銀成(47) (11:00/06:14:00) *14時、現地大盤解説会が開演した。YouTube「囲碁将棋TV -朝日新聞社-」では、その模様がライブ配信されている。 * *【【大盤解説会Live】名人戦開幕局を制するのは?屋敷伸之九段らが登壇、大盤解説会〜渡辺明名人vs斎藤慎太郎八段〜【第80期将棋名人戦・第1局】】 *https://www.youtube.com/watch?v=RYGTYDM63DU * *※局後の感想※ *△5六銀不成(▲4五歩△1九馬▲同飛に△4五銀の狙い)は▲5九香△4七銀成▲5八金で、依然として先手が指しやすい。以下△同成銀▲同香△4八金は▲4五歩できれいにさばかれる。 73 4五歩(46) ( 9:00/05:34:00) *68手目のコメントで紹介した検討手順は▲5九香△4七成銀の交換を入れてから▲4五歩だったが、それだと△3七歩の変化が生じる。本譜はそれを避けた手順だ。 74 1九馬(64) (24:00/06:38:00) 75 同 飛(39) ( 0:00/05:34:00) *青野九段と高崎七段の検討では、まず(1)△8六歩が調べられた。以下▲同歩(▲同銀は△5五角が王手飛車)△8五歩▲5九香△4六成銀▲2八角△4五歩▲4七歩△8六歩▲4六歩△6九角▲9六銀が並べられ「(後手が)攻めきれるとは思えない」と高崎七段。こうなれば▲9五歩(41手目)の貯金が生きた格好だ。そこで(2)△7五歩が代案として示されたが、▲5九香△7六歩▲同銀△5五角▲7七角△1九角成▲4四角で後手が勝てない流れとされた。次は素朴に▲6二角成が厳しい。斎藤は苦しいなか、光明を見いだすことができるか。 76 7五歩(74) ( 0:00/06:38:00) *自玉の手の入れ方も難しいということで、先手玉のコビンに手をつけた。結局は2二銀と1四桂が取り残されてしまったが、そうさせた渡辺の組み立てが秀逸だったといえる。 *15時、午後のおやつが運ばれた。渡辺は飲み物のみの注文で、「コーヒー(ホット)、オレンジジュース」、斎藤が「和菓子と抹茶」。 * *※局後の感想※ *代えて△8六歩▲同歩△7五歩の順も調べられた。以下(1)▲5九香なら△5五角▲1八飛△7六歩▲5六香△7七歩成▲同桂に△8六飛が王手香取りになる寸法だ。しかし、(2)▲1八飛と形を整えられて後手の指し手が難しい。8筋の突き捨てを入れたため、△7六歩▲同銀△7五歩に▲8七銀のスペースを与えてしまっている。 77 5九香打 (32:00/06:06:00) *渡辺が着実に優位を拡大している印象だ。仮に△4六成銀なら(1)▲7五歩と手を戻しておき、次に▲7四歩△同銀▲7二角を狙えばいい。あるいは、いきなり(2)▲7四金△同銀▲7二角と派手にいく筋もある。 78 5五角打 (24:00/07:02:00) *△7六歩▲同銀の交換を入れてから△5五角は▲7七角の合わせがピッタリなので、単に角を打った。 79 1八飛(19) (12:00/06:18:00) *先手は手の流れに乗って、飛車の横利きを復活させることができた。自玉の守りに貢献しそうだ。 80 7六歩(75) ( 3:00/07:05:00) 81 5六香(59) ( 0:00/06:18:00) *△7七歩成▲同桂に△3七角成なら、そこで▲8二銀が厳しそうだ。以下(1)△同飛は▲7一角が王手飛車。(2)△4一飛も▲7三銀成△同馬に▲6五桂が王手馬取りだ。 82 7七歩成(76) ( 0:00/07:05:00) 83 同 桂(89) ( 0:00/06:18:00) 84 3七角成(55) ( 1:00/07:06:00) *時刻は16時を回った。渡辺はこの局面で腰を落ち着けて考えている。15分使ったところで席を立った。 85 8二銀打 (18:00/06:36:00) *三段玉をとがめる銀捨てが実現した。先手は△7六歩と桂頭を攻められても、しばらくは持ちこたえられる。9筋の位と、飛車の横利きの守備力が大きい。 86 同 飛(81) ( 8:00/07:14:00) 87 7一角打 ( 0:00/06:36:00) 88 4三玉(53) ( 1:00/07:15:00) *代えて△6二飛は、▲6一金でかえって攻めが速くなる恐れがあった。本譜の△4三玉で、あわよくば△3四玉から上部に逃げ出したいが……。 89 8二角成(71) ( 2:00/06:38:00) 90 7六歩打 ( 1:00/07:16:00) *代えて△3四玉は▲3五歩△同玉▲3八金が一例で、後手は粘りようがない。3七馬の利きがそれると▲7三馬が生じる。 91 7一馬(82) ( 4:00/06:42:00) *4五歩との連係で後手玉を追いつめる。次は▲4四馬だ。 92 7七歩成(76) ( 0:00/07:16:00) 93 同 金(78) ( 0:00/06:42:00) 94 3五銀打 ( 0:00/07:16:00) *4四の地点を守りつつ、▲3五金の打ち場所を消して粘る。 95 5三飛打 (12:00/06:54:00) *上部に逃がす王手ではあるが、自陣の1八飛と4九金の潜在力に期待した。 96 3四玉(43) ( 0:00/07:16:00) 97 6三飛成(53) ( 0:00/06:54:00) 98 2七馬(37) ( 1:00/07:17:00) *代えて(1)△2五玉は▲1六銀△3六玉▲3八金、(2)△4五玉は▲5四竜△3六玉▲3八歩でそれぞれ寄り形だった。 *17時、この局面で渡辺が17分使って夕休憩に入った。両対局者には軽食が用意されており、メニューは渡辺が「天ぷらそば」、斎藤が「おにぎり3種(鮭、ちりめんじゃこと大葉、梅干し」。消費時間は、▲渡辺7時間11分、△斎藤7時間17分。対局は17時30分に再開される。 99 4八飛(18) (18:00/07:12:00) *17時30分、対局再開。丁寧に飛車金両取りを受けた。△4五玉も消している。 100 3七銀打 ( 2:00/07:19:00) *自玉の脱出路を確保するべく、盤上に味方を増やして上部開拓を図る。 101 4七飛(48) ( 3:00/07:15:00) *ここで△3六馬なら後手玉の逃げ道が狭まるので、▲4三銀と放り込む手が成立する。以下(1)△2五玉には▲1六金△2四玉▲6一馬で後手玉は寄り形だ。▲4三銀に(2)△同金は、▲同竜△同玉▲4四歩△3三玉▲3四金△同玉▲6一馬以下の詰みとなる。 102 5五歩(54) ( 8:00/07:27:00) *意外な一手が飛び出した。4五歩が移動すれば△6三馬と竜を抜けることは分かるが、この1手だけで真意をくみ取るのは難しい。 103 3八歩打 ( 9:00/07:24:00) *3七銀に働きかけるのが急所のようだ。どこに銀が移動しても▲2七飛で馬を入手できる。 104 同 銀(37) ( 0:00/07:27:00) 105 2七飛(47) ( 0:00/07:24:00) 106 同 銀(38) ( 0:00/07:27:00) 107 6一角打 ( 0:00/07:24:00) *この局面で斎藤は1分使い、次の手を指さずに投了を告げた。終局時刻は17時59分。消費時間は、▲渡辺7時間24分、△斎藤7時間28分。七番勝負第1局は渡辺が先勝。第2局は石川県金沢市「金沢犀川温泉 川端の湯宿 滝亭」で行われる。 *投了以下は一例となるが、(1)△4三桂は▲4四歩△同銀▲4六金、(2)△4五玉も▲4七金で、いずれも後手玉は寄り形となる。 * *※局後の感想※ *感想戦は18時39分まで行われた。 108 投了 ( 1:00/07:28:00) まで107手で先手の勝ち