# --- Kifu for Windows (Pro) V6.65.64 棋譜ファイル --- 対局ID:15057 記録ID:642d56e63e0cbe1d08be7dfc 開始日時:2023/04/05 09:00 終了日時:2023/04/06 20:39 棋戦:第81期名人戦七番勝負第1局 戦型:その他の戦型 持ち時間:9時間 秒読み:60秒 消費時間:110▲539△518 場所:東京都文京区「ホテル椿山荘東京」 備考:昼休前25手目46分\n2日目昼休前50手目16分・夕休前74手目25分\n18:30〜21:50まで中断\n封じ手時刻:21:50<43手目>\n 先手年齢:38 後手年齢:20 リーグ成績:▲0勝0敗△0勝0敗 振り駒:4,0,渡 先手消費時間加算:0 後手消費時間加算:0 昼食休憩:12:00〜13:00 夕食休憩:17:00〜17:30 昼休前消費時間:25手46分 手合割:平手   先手:渡辺明名人 後手:藤井聡太竜王 先手省略名:渡辺明 後手省略名:藤井聡 手数----指手---------消費時間-- *春風とともに名人戦は盤寿を迎えた。渡辺明名人に藤井聡太竜王が挑戦する、第81期名人戦七番勝負が開幕する。 *第1局は2023年4月5・6日(水・木)に東京都文京区「ホテル椿山荘東京」で行われる。対局開始は両日とも9時。持ち時間は各9時間。昼食休憩は12時から1時間。1日目に18時30分を迎えた時点で、手番の棋士が次の一手を封じる。2日目は17時から30分間の休憩がある。 *第1局の先後は振り駒で決定される。立会人は中村修九段、毎日副立会は三枚堂達也七段、朝日副立会は千田翔太七段、記録係は齊藤優希三段(深浦康市九段門下)と田中大貴三段(北島忠雄七段門下)。観戦記は毎日新聞を上地隆蔵さん、朝日新聞を後藤元気さんが担当する。 *1日目の朝を迎えた。東京の天気は曇りのち晴れ、最低気温は10度、最高気温は21度と予想されている。8時47分に藤井、51分に渡辺が入室した。 * *【主催=毎日新聞−将棋】 *https://mainichi.jp/shogi/ *【主催=朝日新聞−将棋】 *http://www.asahi.com/shougi/ *【協賛=大和証券グループ本社】 *https://www.daiwa-grp.jp/?cid=ad_exl_shogi_2201 *【協力=藤田観光】 *https://www.fujita-kanko.co.jp/ * *(棋譜・コメント入力=紋蛇) *[棋譜表示の*はコメント付きの指し手。#は局後の感想が追記された指し手。【】内は中継ブログタイトルならびにリンク] 1 2六歩(27) ( 0:00/00:00:00) *渡辺の振り歩先で振り駒が行われ、歩が4枚。渡辺の先手が決まった。 *初手は▲2六歩。藤井の2手目は△8四歩がほとんどなので、相掛かりか角換わりになるだろう。前夜祭の戦型予想で角換わりの対抗に出ていた矢倉を目指すなら、初手▲7六歩だった。 2 8四歩(83) ( 0:00/00:00:00) *◆藤井 聡太(ふじい そうた)竜王(王位・叡王・棋王・王将・棋聖)◆ *2002年7月19日生まれ、愛知県瀬戸市出身。杉本昌隆八段門下。2016年、四段。2021年、九段。棋士番号は307。 *タイトル戦登場は14回。獲得は竜王2期、王位3期、叡王2期、棋王1期、王将2期、棋聖3期の計13期。棋戦優勝は9回。 3 2五歩(26) ( 1:00/00:01:00) *◆渡辺 明(わたなべ あきら)名人◆ *1984年4月23日生まれ、東京都葛飾区出身。所司和晴七段門下。2000年、四段。2005年、九段。棋士番号は235。 *タイトル戦登場は44回。獲得は竜王11期(永世竜王)、名人3期、王座1期、棋王10期(永世棋王)、王将5期、棋聖1期の計31期。棋戦優勝は11回。 4 8五歩(84) ( 0:00/00:00:00) *本局の模様はABEMAの将棋チャンネルでも動画中継される。 *1日目の解説者は真田圭一八段、村山慈明七段。聞き手は貞升南女流二段、脇田菜々子女流初段。 * *【ABEMA:第81期名人戦七番勝負 第一局 1日目 渡辺明名人 対 藤井聡太竜王】 *https://abema.tv/channels/shogi/slots/CYdyT9GuMLoBYs * *2日目の解説者は森内俊之九段、黒沢怜生六段。聞き手は渡部愛女流三段、山口恵梨子女流二段。 * *【ABEMA:第81期 名人戦七番勝負 第一局 2日目 渡辺明名人 対 藤井聡太竜王】 *https://abema.tv/channels/shogi/slots/CYdySqEArfY7xT 5 7六歩(77) ( 0:00/00:01:00) *渡辺は今年度成績が1勝0敗(1.000) *昨年度成績は23勝18敗(0.561) *2021年度成績は23勝18敗(0.561) *通算成績は730勝382敗(0.656) * *2022年度は名人を防衛し、第93期ヒューリック杯棋聖戦で挑戦者決定戦に進出、第16回朝日杯将棋オープン戦で準優勝した。10連覇中だった棋王は、藤井聡太竜王を相手に失冠している。第50回将棋大賞は優秀棋士賞を受賞した。 6 3二金(41) ( 0:00/00:00:00) *藤井は本局が今年度初対局 *昨年度成績は53勝11敗(0.828) *2021年度成績は52勝12敗(0.813) *通算成績は318勝63敗(0.835) * *昨年度は史上2人目の六冠を最年少で達成し、一般棋戦すべて(タイトル戦以外の公式戦。朝日杯将棋オープン戦・銀河戦・NHK杯・将棋日本シリーズ)を優勝している。第50回将棋大賞は、最優秀棋士賞・最多勝利賞・勝率一位賞を受賞した。 *藤井は名人戦が先月19日・棋王戦以来の公式戦となる。昨年度は夏からハードスケジュールで、藤井自身も「7月以降は対局の多い時期が続いた」と振り返った。2週間ほど空けて名人戦に臨めるのは、ほどよい休息になっただろう。心身をリラックスさせながらも、対局の間がそこまで空いていないので感覚が鈍ることもないと思われる。昨年度の初対局は4月28日の第7期叡王戦五番勝負第1局で、前回の対局・3月9日の第80期順位戦B級1組・佐々木勇気七段と1カ月と3週間ほど空いた(段位は当時)。 7 7七角(88) ( 0:00/00:01:00) *渡辺は順位戦に第59期から参加し、通算成績は144勝57敗(0.716)。第69期にA級に昇級し、第76期に初めて降級したものの、1期でA級に復帰し9連勝で名人初挑戦を決めた。A級全勝は第26期(1971年度)の中原誠八段、第62期(2003年度)の森内俊之八段、第70期(2011年度)の羽生善治二冠に続いて、史上4人目となる快挙である。 *渡辺は2020年に豊島将之名人から奪取し、斎藤慎太郎八段の挑戦を2年連続で退けた。 * *【2022/05/28  第80期名人戦七番勝負第5局 ▲渡辺明名人 (3勝1敗) ─ △斎藤慎太郎八段 (1勝3敗 )】 *http://member.meijinsen.jp/pay/kif/meijinsen/2022/05/28/M7/12877.html 8 3四歩(33) ( 0:00/00:00:00) *藤井は順位戦に第76期から参加し、通算成績は57勝5敗(0.919)。初参加のA級で7勝2敗の成績を収め、広瀬章人八段とのプレーオフを制して挑戦権を獲得した。本シリーズには史上2人目の七冠だけでなく、谷川浩司(十七世名人)の残した21歳2カ月という最年少名人記録の更新もかかる。現在は20歳で誕生月は7月のため、フルセットにもつれ込んだすえに奪取しても1位の記録になる。 *将棋界で最長の持ち時間である9時間・2日制を経験するのは、今回が初めて。 9 6六歩(67) ( 1:00/00:02:00) *「あ、角換わりじゃない!」と千田七段が声を上げる。控室のモニタ前に関係者が集まって、対局室の様子と盤面を凝視した。 *角換わりシリーズかと思いきや、渡辺は変化した。角換わりに進めるなら、▲6六歩に代えて▲8八銀△7七角成▲同銀だった。先後は異なるが、今年2月の第16回朝日杯将棋オープン戦決勝▲藤井聡太竜王−△渡辺明名人戦は初手から▲2六歩△3四歩▲7六歩△4四歩と進行し、渡辺は雁木系を目指していた。結果は藤井勝ち。渡辺は「用意の作戦か」の問いに、「適当です(苦笑)。相手も決まっていないので」と話していたが、戦いが始まってからも形勢は互角だった。ここに鉱脈を見いだしたのかもしれない。 *ちなみに、藤井聡太竜王を相手に3勝1敗で勝ち越している深浦康市九段は雁木系を得意にし、先手番でも▲6六歩と止めて採用している。 10 3三角(22) ( 0:00/00:00:00) *飛車先交換を防ぐ。 11 5八金(49) ( 1:00/00:03:00) *これまでの対戦成績は渡辺が3勝、藤井が16勝。直近の対局は先月19日の第48期棋王戦コナミグループ杯五番勝負第4局で、藤井が角換わりの熱戦を勝ちきった。 *渡辺と藤井のタイトル戦は5回目で、藤井のタイトル戦の相手は渡辺が最も多い(次は豊島将之九段で4回)。これまでのタイトル戦4回を制したのはすべて藤井で、渡辺にとって天敵といえる。 *渡辺の対藤井戦の3勝はすべて角換わりの後手番であげたもの。直近のタイトル戦、第48期棋王戦コナミグループ杯五番勝負のシリーズ4局すべてが角換わりになったことを考えると、名人戦でも藤井の角換わりを受けて立つ方針が本命だった。 12 9四歩(93) ( 8:00/00:08:00) *端を突いて、様子を見る。手元のデータベースを調べてみると、前例はなかった。「へぇー、いま突いたんですか」と佐藤康光九段。端は不急の一手になりやすいので、金銀の自陣整備を急ぐのも自然な考えだ。 *中村修九段、佐藤康九段、千田七段、三枚堂七段、交代要員の記録係・齊藤優希三段が継ぎ盤を挟む。 *佐藤康九段「これは端を受けずに金を上がるでしょう」 *中村修九段「ふふ。それは昭和の感覚なんだよ」 *佐藤康九段「ええっ」 *継ぎ盤がどっと笑いに包まれた。▲9六歩と受けるかは悩ましい。 *三枚堂七段「△9四歩と突いたのは、▲9六歩と受けてくれれば後手が急戦を仕掛けやすいということですね。受けなければ端を詰める含みもあります」 *近年は雁木系に急戦を挑む定跡が確立されている。その変化でよく▲9五角(実際は後手が雁木系にすることが多いので、△1五角の符号が多い)と王手で切り返す筋が出てくる。端の突き合いが入れば、その角の飛び出しが消えるというわけだ。 *「▲9五角が消えると、先手が損に見えるけどなぁ。急戦は大丈夫なんですか」と佐藤康九段。▲6七金で矢倉を目指すのはどうかと話している。後手を持つ千田七段は、それなら雁木系に組んで一局という見解だ。 13 9六歩(97) ( 3:00/00:06:00) *渡辺は3分で端を受ける。「これが現代感覚か」と佐藤康九段は継ぎ盤を動かす。△6二銀▲7八金△7四歩▲4八銀△7三銀▲6七金右△6四銀▲5六歩に△7五歩と仕掛けてくれば、▲6五歩と突けば対応できるという。以下△同銀に▲7五歩と取れば、収まりそうだ。 14 6二銀(71) ( 0:00/00:08:00) *名人戦・順位戦は、毎日新聞社と朝日新聞社が主催する棋戦。名人戦七番勝負は大和証券グループが協賛している。順位戦はフリークラスを除いた棋士がA級、B級1組、B級2組、C級1組、C級2組の5クラスに分かれてリーグ戦を戦う。A級同率首位の棋士が複数出た場合は同率の棋士全員によるプレーオフとなる。名人とA級優勝者が、例年4月から7月にかけて七番勝負(2日制、持ち時間は各9時間)を行う。 15 7八金(69) ( 1:00/00:07:00) *第81期順位戦の各クラスの昇級、降級は以下の通り(段位は最終戦の対局時)。 * *【A級】 *名人挑戦→藤井聡太竜王 *降級→糸谷哲郎八段、佐藤康光九段 * *【B級1組】 *昇級→佐々木勇気七段、中村太地七段 *降級→郷田真隆九段、丸山忠久九段、久保利明九段 * *【B級2組】 *昇級→大橋貴洸七段、木村一基九段、増田康宏七段 * *【C級1組】 *昇級→石井健太郎六段、青嶋未来六段、渡辺和史五段 *降級→高野秀行六段、平藤眞吾七段 * *【C級2組】 *昇級→斎藤明日斗五段、服部慎一郎五段、古賀悠聖四段 *降級→矢倉規広七段、堀口一史座八段 16 7四歩(73) ( 2:00/00:10:00) *7筋を突いたので、急戦の可能性が出てきた。先手は△7三銀からの早繰り銀系に注意したい。 17 4八銀(39) ( 1:00/00:08:00) *本局で使用する盤と駒は「名人駒」と「名人盤」と呼ばれるもので、基本的に名人戦でしか使用されない。名人駒は「双玉の名工」と呼ばれた奥野一香作、書体は宗歩好、島黄楊赤柾の盛り上げ駒。赤柾は濃い飴色に変わり、すり減った裏字は歴戦を物語る。名人盤は戦前に製作され、面を削って補修してきたため、いまではやや薄くなっている。 18 4二銀(31) ( 5:00/00:15:00) *「ホテル椿山荘東京」の周辺は古来より椿が自生し、「つばきやま」と呼ばれていた。明治11年に山縣有朋が邸宅を構えて、「つばきやま」を音読みして「椿山荘(ちんざんそう)」と命名する。1992年に「フォーシーズンズホテル椿山荘東京」が開業し、2013年に現在の名称「ホテル椿山荘東京」になった。 *起伏に富む庭園には御神木の推定樹齢500年のシイの木、100種1000本のツバキの木々が生い茂る。4月9日(日)まで行われているのが、春の庭園演出『夜桜雲海』。庭園に植えられている20種・100本のサクラは2月から開花し、現在はソメイヨシノが散りゆく中、八重桜が華やぎをもたらす。そして夜桜と「東京雲海」が幻想的な光景を繰り広げる。 *名人戦は第66期から連続して開催されている。対局室は料亭「錦水」で、滝と雲錦池に面している。藤井が椿山荘で対局するのは今回が初めて。 * *【東京のホテルならホテル椿山荘東京。】 *https://hotel-chinzanso-tokyo.jp/ 19 3六歩(37) ( 3:00/00:11:00) *椿山荘は東京都文京区に位置する。2キロ圏内にある墓には、将棋史に名を刻む棋士が眠っている。護国寺には伊藤宗印(八代宗印)。将棋御三家のひとつである伊藤家の当主で、十一世名人として明治維新以後の棋界再建に尽力し、将棋雑誌発行を試みた。昭和11年に建立された碑には「棋聖宗印之碑」と記されている。 *善仁寺には実力制第二代名人の塚田正夫名誉十段の墓があり、また駒型の石碑がある。塚田名誉十段は文京区出身で、無敵・木村義雄を破ったことでも知られる。 20 7三桂(81) (10:00/00:25:00) *銀ではなく桂を使った。後手の方針は急戦か、持久戦かはまだわからない。 21 6九玉(59) ( 9:00/00:20:00) *10時、午前のおやつが出された。渡辺は「ガトーオペラ(フルーツなし)」。「アイスコーヒー」、藤井は「三重塔ばーばうむ(抹茶・いちご)、フルーツ添え」、「アイスコーヒー」。 *10時30分ごろ、記録係が田中大三段から齊藤優三段に交代した。今期は試験的に2人制で行われる。控室に戻ってきた田中大三段は「渡辺名人の気合いがいつも以上にすごい気がしました」と話す。 * *【毎日新聞:名人戦記録係2人の分担時間決定 負担軽減 第1局1日目は3回交代】 *https://mainichi.jp/articles/20230405/k00/00m/040/017000c 22 6四歩(63) (39:00/01:04:00) *じっくり39分考えて、6筋を突いた。△6三銀〜△5四銀〜△6二飛の右四間飛車が浮かぶ。雁木を目指すなら△6四歩に代えて△4四歩〜△4三銀が有力で、後に△5四歩〜△4二角としたときに△6四角と出る含みを残せた。 23 6八銀(79) (21:00/00:41:00) *11時ごろの局面。現局面までの消費時間は▲渡辺41分、△藤井1時間4分。角換わりと違って、終盤まで定跡が整備されている展開ではない。類型はありながらも、双方に分岐点が多い将棋だ。研究勝負ではないため、序盤から少考を重ねながら進めている印象を受けている。 *▲6八銀は中央志向の一手。▲8八銀の含みを残し、菊水矢倉を目指すのも考えられた。 24 4四歩(43) (14:00/01:18:00) *藤井は角道を止めて、持久戦の態度を明らかにした。 *中村修九段「後手の急戦はなくなりました。先手は分岐点ですね。持久戦にするなら▲6七銀とし、右銀を腰掛け銀に構える形がありますね。これは後手も同じような形に組んで、先手が打開できるかどうかを考えます。▲6七金右もありますが、これは角を使いにくいのでどうでしょうか。先手が持久戦を避けるなら、▲3七銀から角頭を狙う展開が考えられます。渡辺名人が何を準備してきたかですね」 *12時、ここで渡辺が46分考えて、昼食休憩に入った。消費時間は▲渡辺1時間27分、△藤井1時間18分。昼食注文はともに「にぎり寿司盛り合わせ」。渡辺はさび抜きで寿司増量、藤井は「ホテル椿山荘東京の椿茶(ホット)」も頼んだ。対局再開は13時。 25 3七銀(48) (46:00/01:27:00) *対局再開。昼食休憩後の指し手。右銀を攻めに使う方針だ。渡辺が積極的に動こうとしている。 26 4三銀(42) ( 3:00/01:21:00) *先手が3筋を攻めようとしているので、4三銀型を作って角頭を強化する。 27 3五歩(36) ( 1:00/01:28:00) *13時5分の着手。 *颯爽と仕掛けた。△3五同歩に▲4六銀と出て、次に▲3五銀から2筋突破を狙う。 *現局面から△3五同歩▲4六銀に、まず筋の(1)△3六歩は▲3五銀なら△3七歩成▲同桂△3六歩とできるものの、▲2六飛と浮かれると▲3五銀〜▲2四歩が受からない。 *ほかに(2)△3四銀は▲3八飛△5二金▲3五銀△同銀▲同飛△4三金右▲7五歩で、後手は桂頭を狙われると居玉なので支えきれないだろう。 *第3の候補手は(3)△8六歩。▲同角なら角が質駒になり、△4五歩が後の△5五角だけでなく△6六角も生じる。▲8六同歩には△8五歩▲3五銀(代えて▲8五同歩は△同桂▲8八角△8七歩▲同金△9七桂成)△8六歩▲8八歩に△8五飛と縦横無尽に飛車を使ってどうか。 *藤井が長考に沈んでいる。先手に一方的に攻められそうなので、後手は神経を使う局面だ。 28 6三銀(62) (98:00/02:59:00) *14時44分、1時間38分の考慮で着手。△6三銀までの消費時間は▲渡辺1時間28分、△藤井2時間59分。 *△6三銀とは驚いた。桂頭をカバーしながら△5四銀右〜△4五歩と受けるつもりだろう。ただ、角頭は不安定なままの恐れがある。それならば、6二銀・6一金型の低い陣形をキープし、▲7三角のキズを消しながら飛車切りのカウンターを狙うほうが攻めやすかった。 *中村修九段「▲3四歩△同銀▲3八飛にどう受けるんですかね。後手は先手に3五に銀を出られるような展開は避けたいです。しかし▲3八飛に△5四銀だと▲2六銀△4三銀右▲4六歩で▲3五歩を狙われます」 *15時0分、渡辺はおしぼりで顔をぬぐう。午後のおやつは渡辺が「東京雲海プリン(メイプル)」「アイスコーヒー」、藤井が「チーズケーキ・フルーツ添え」、「アイスティー」。 29 3六銀(37) (34:00/02:02:00) *銀をまっすぐ立って前進させて、力をためた。▲4六銀に比べると△4五歩が当たらないのが大きい。その代わり、▲3八飛とスピーディーに力をためる順はなくなっている。 * *※局後の感想※ *渡辺「3六銀型は△4五歩が当たらないものの、浮き駒なので安定しないです」 30 6二金(61) ( 2:00/03:01:00) *金を立つ。6二金・8一飛型を目指す意味と思われるが、ここで有効なのかは何ともいえない。例えば現局面から▲3八飛△8一飛▲3四歩△同銀▲3五銀△同銀▲同飛と進むと、後手は角頭が薄いうえに玉の位置が難しい。△6二金に代えて△5二金や△6二玉と右玉にするのもあっただけに、藤井がどうやって自陣のバランスを取るつもりなのかが見えてこない。 * *※局後の感想※ *▲3四歩△同銀▲3八飛は△8六歩▲同角△4五歩▲3五銀と進む。以下△3七歩▲同飛△3四歩▲同銀△5五角が藤井の示した手で、渡辺は「それで受かるのか」と話した。△5五角に▲4三銀成△3七角成▲同型△4三金▲3二角が並べられた。ともに自信はなし。 31 6七金(58) (29:00/02:31:00) *6筋を金で厚くする。代えて▲6七銀もあったが、▲6七金右のほうが▲7九玉と寄ったときに金銀が密集して堅い。 *三枚堂七段「▲6七銀はバランス重視の方針でした。▲6七金右は玉が堅く、渡辺名人らしいと思います」 *先手は3筋で仕掛けの目途が立っているので、手詰まりになる心配がない。動く権利を確保してから玉を固めるのは、戦上手になる第一歩である。 *対照的に後手はどうやって均衡を保つか、センスが問われている。一段飛車と△5二玉の中住まいが有力ながら、3・4筋が戦場になったときに玉の当たりが強い面もある。 * *※局後の感想※ *「金が形だと思った」と渡辺。玉形をしっかり整えたが、本譜のように仕掛けられると固めた構想が思ったほどの効果がなかったか。 32 5四歩(53) (17:00/03:18:00) *三枚堂七段「後手は△4二角から△6五歩▲同歩△8六歩▲同歩△同角▲同角△同飛▲8七歩△8一飛と動くつもりでしょうね。角交換になればバランス型が生きますし、△8一飛の次は△5五角の狙いが生まれています。なので、先手はその前に動きたいところです。▲3四歩△同銀▲3八飛でどうでしょうか」 33 4六歩(47) (31:00/03:02:00) *今度は攻撃陣に手をかけた。(1)△4二角に▲4五歩△同歩▲同銀を見せて、牽制している。以下△4四歩は▲3四銀、△3五歩は▲4四歩△5二銀左▲3四銀で先手がよい。 *千田七段「何も考えないなら、(2)△8一飛▲7九玉です。しかし、またそこでどう指すかが難しい。昔のひとなら△6一玉から△7二玉と囲うんでしょうけど、いまは△5二玉と中住まいにするでしょう。しかし、それは玉が戦場に近いので不安が残ります」 34 6五歩(64) (26:00/03:44:00) *中村修九段「えー、仕掛けた! 1日目なのにー」 *後手がどう待つかが検討されていたところで、△6五歩の攻めは意表を突かれる。 *三枚堂七段「先手は次に▲7九玉が大きな手だったので、その前に動いたということでしょうね。4筋を突いたばかりなので、先手玉は△4七角や△3六角のキズがありますし。でもかなり軽い攻めに見えます」 * *※局後の感想※ *渡辺は△6五歩を軽視していたようだ。 *渡辺「突かれちゃうんじゃ、失敗でしたね」 35 同 歩(66) (21:00/03:23:00) *名人の称号は江戸時代に由来する。1612年に初代大橋宗桂が一世名人に襲位し、江戸幕府より俸禄を与えられていた。当時から世襲制で、その座に着けば生涯を名人として過ごした。 *だが、1935年(昭和10年)に短期実力制のタイトル戦に変更されることが発表される。1938年に関根金次郎十三世名人が名人位を返上し、名人決定特別リーグで好成績を収めた木村義雄が実力制初代名人の座に就いた。こうして、名人戦は将棋界で最も長い歴史を持つタイトル戦になり、今年に第81期の盤寿(将棋のマス目は81)を迎えたのだ。 *通算5期で与えられる称号が「永世名人」である。これまで木村義雄(十四世名人)、大山康晴(十五世名人)、中原誠(十六世名人)、谷川浩司(十七世名人)、森内俊之(十八世名人)、羽生善治(十九世名人)が獲得してきた。なお、谷川は昨年に還暦を迎えたのを機に十七世名人に襲位している。 *(37手目の棋譜コメントに続く) 36 同 桂(73) ( 1:00/03:45:00) *▲8八角が▲6六歩を狙って当然に見えるが、角引きだと△8六歩▲同歩△3五歩▲同銀△8七歩▲同金△8五歩という筋がある。以下▲同歩は△同飛▲8六歩に△5七桂不成▲同銀△3五飛の十字飛車が決まる。途中の▲8七同金では▲6六角、また△8五歩に▲同歩ではなく▲6六角で難しそうながら、自陣に嫌みを抱える。 *▲8八角の変化を嫌うなら、▲6六角も有力のようだ。桂は取れないものの、8筋の十字飛車や継ぎ歩攻めがない。後手は角上がりに△8六歩から交換して待つことになる。 * *※局後の感想※ *渡辺「▲8八角と引けないようでは失敗です」 37 6六角(77) ( 6:00/03:29:00) *(35手目棋譜コメントの続き) *名人を最も獲得したのが大山の18期で、13連覇は最長記録となっている。大山はガンになっても挑戦者に名乗りを上げ(1986年、63歳で中原名人に挑戦)、1992年に69歳で逝去するまでA級に在籍した。これほど息長くトップ棋士として君臨した大名人はいない。ちなみに絶局となったのは1992年6月25日の棋聖戦二次予選で、相手は本局の立会人・中村修九段である。 *史上最年長名人の記録は米長邦雄。7度目の挑戦となった1993年の第51期名人戦で初の名人位を獲得したときは49歳11カ月で、在位中に50歳を迎えた。初防衛戦は羽生善治四冠(現九段)に敗れた。 *史上最年少名人の記録は、谷川浩司が持つ。第41期名人戦挑戦者決定リーグ戦(現A級順位戦)で7勝2敗の成績を収め、中原誠十段とのプレーオフを制した。初タイトル戦となった第41期名人戦の相手は加藤一二三で、前年に中原誠との千日手・持将棋を挟んだ「十番勝負」を制し、初挑戦から22年で悲願の名人位を42歳で初獲得していた。加藤と谷川の七番勝負は4勝2敗で谷川が制し、21歳2カ月の記録を樹立する。インタビューでは「1年間、名人位を預からせていただきます」の名言が出た。後年、加藤は「ひねり飛車対策が間に合ってなかった」と敗因を語っている。 *(38手目の棋譜コメントに続く) 38 8六歩(85) ( 5:00/03:50:00) *(37手目棋譜コメントの続き) *藤井は八冠制覇を伺う勢いだ。昨年度は持っていたタイトル5つの防衛に成功し、前年度の最終局に棋王を奪取して六冠に前進した。一般棋戦すべて(タイトル戦以外の公式戦。朝日杯将棋オープン戦・銀河戦・NHK杯・将棋日本シリーズ)を優勝し、その勢いは留まることを知らない。最強の名人挑戦者といえる。 *思い起こすのが、七冠ロードを歩む羽生善治(当時は四冠)が名人に挑戦したときだ。羽生は1993年度のA級が初参加で、挑戦権を獲得した。7勝2敗でプレーオフを制したのは、藤井聡太竜王と同じ成績である。 *以下は当時の順位戦A級の最終結果。 * *[A級成績一覧] ( )内は順位 *【7勝2敗】谷川浩司(4)、羽生善治(9) *【6勝3敗】中原誠(1)、 *【4勝5敗】高橋道雄(2)、有吉道夫(7)、塚田泰明(8)、加藤一二三(10) *【3勝6敗】小林健二(5)=降級、田中寅彦(6)=降級 * *(39手目の棋譜コメントに続く) 39 同 歩(87) ( 2:00/03:31:00) *(38手目棋譜コメント続き) *米長邦雄名人(50歳)に羽生善治四冠(23歳)が挑戦する、第52期名人戦は1994年4月11日に開幕した。当時のタイトル保持者は下記の通りである。 * *竜王=佐藤康光 *名人=米長邦雄 *王位=羽生善治 *王座=羽生善治 *棋王=羽生善治 *王将=谷川浩司 *棋聖=羽生善治 * *羽生が七冠の全冠独占(当時は叡王のタイトルがない)を果たしたのは1996年なので、第52期名人戦は七冠ロードを占うシリーズだった。米長が1993年の名人就位式で、檀上から羽生挑戦を予言したのも自然だっただろう。 *七番勝負は羽生3連勝から米長が2勝を返し、第6局で決着した。またこのシリーズが色々とドラマがあった。 *(40手目の棋譜コメントに続く) 40 同 飛(82) ( 9:00/03:59:00) *(39手目棋譜コメントの続き) *名人戦開幕前のインタビューで、羽生は「普通の定跡形は指さない」と宣言して七番勝負に臨んだ。第1局に採用したのが先手で5筋位取り中飛車。当時はゴキゲン中飛車を開拓した近藤正和七段がプロデビューする前で、珍しい作戦だった。特に米長と羽生は居飛車党同士で、矢倉が「将棋の純文学」と呼ばれていた時代である。大舞台で普段は指さない戦法を登場させるのは、決断がいることだった。 *第1局の結果は羽生勝ち。第2局で、羽生は初手▲7六歩に△3二金!の予定だった。1994年1月の第63期棋聖戦第4局の谷川浩司王将戦で採用した作戦で、49手で敗れている。羽生は改良案を準備してきたものの、米長に初手▲2六歩と指されてその当てが外れた。戦型は角換わりになり、羽生が大熱戦を制した。 *第3局は相掛かり。当時は先手が飛車先交換から2六飛型に構えるのが常識だったなか、羽生は2八まで引き揚げる。平成相掛かりで主流になった指し口で、先見の明があった。 *第4局は後手羽生の横歩取り。小学生から愛着がある戦法で、羽生の頭脳シリーズには書いた横歩取り△4五角戦法の結論は小学生時代に出した結論をそのまま書いたというのだから驚くしかない。米長は羽生の横歩取りを受けて立つ。8四飛型の中原囲いから△5四飛と転換する新しい指し口に、中盤で米長に「▲6七玉」の力強い受けが出て、名人が圧勝した。 *ちなみに羽生は第4局の直前に、竜王戦の谷川浩司戦で2手目△6二銀を指していた。米長は2手目△6二銀にもしっかり対策を練って待ち受けていたものの、予想は当たらなかった。 *第5局。羽生はこれまでのシリーズで振り飛車、相掛かり、角換わり、横歩取りをやったので、まだ指していない矢倉を志向した。しかし米長が強気の端攻めからうまく手をつなぎ、2勝目を上げた。 *第6局は角換わり。羽生はもう2手目△3二金を考える気分ではなく、角換わりでも矢倉でも追随するつもりだったという。将棋は羽生が歩の新手筋から桂得になり、リードを拡大して押し切った。 *(41手目の棋譜コメントに続く) 41 8七歩打 ( 5:00/03:36:00) *(40手目棋譜コメントの続き) *後に米長は、カド番で迎えた第4局を「この一局に負けたら引退すると決めて対局に臨んだ」と振り返っている。その理由は、40歳を過ぎて研究材料にしてきた羽生世代に一方的に負かされるようでは、十数年間に及ぶ人生設計が終了したことを意味するからと考えたからだ。米長は年下の「55年組」(中村修九段ら昭和55年に棋士になった世代。同年代に谷川浩司)に対抗するために「米長道場」を開いて、若手強豪の森下卓を塾頭に羽生世代が自由に将棋を指せる場所を作った。そこで若手の感覚を学び、自分が培ってきた大局観を刷新しようとしたのだ。森下によれば、羽生は常連メンバーではなかったものの、ゲストで何回かきたことがあったという。 *第4局は米長流の力強い玉さばきが出て、快勝した。続く第5局もモノにする。 *羽生は第6局の自戦記で3連勝4連敗が浮かび、「自分が記念すべき第一号になるのではないかという不安が頭をかすめた」と記している。しかし、そのプレッシャーに打ち勝って第6局を制して五冠を達成。同年秋に竜王を奪取して、六冠まで勢力を拡大する。最後のタイトルを持つのは谷川浩司。羽生は挑戦権を獲得するも、フルセットのすえに谷川が死守して七冠はならなかった。しかし、驚いたことに羽生はすべてのタイトルを防衛して2年連続で王将挑戦を決める。今度はストレートで谷川をくだし、1996年に七冠独占を果たしたのだった。 *(45手目棋譜コメントに続く) 42 8三飛(86) ( 7:00/04:06:00) *8一ではなく、8三に引いた。8三飛型は△6四銀と攻めを厚くしたときに、飛車の横利きが通る。 *18時30分、渡辺が封じ手の意思表示をした。43手目に使った時間は25分。消費時間は▲渡辺4時間1分、△藤井4時間6分。2日目は明朝9時に開始される。封じ手予想は▲7九玉が大本命だ。 *中村修九段「▲7九玉が普通だけど、それだとみんなと一緒になっちゃうから▲8八角にしましょうか」 *三枚堂七段「▲7九玉です。渡辺名人の作戦選択に意表を突かれました。角換わりシリーズかと思っていたので、また楽しみが増えましたね。本局は戦いが起こったものの、今後も激しくなるかは見えにくいです。ジトジトとした展開が続きそうで、形勢はいい勝負でしょう。どちらを持ちたいかといわれると……先手ですかね。私の好きな桂を使えているのは後手ながら、攻めは軽く居玉なのでまとめるのは大変そうです」 *千田七段「▲7九玉が本命中の本命です。局面を点で見ると確かに▲8八角も考えられますが、それなら直前の△6五同桂に▲8八角と引いておくだろうと思います。雁木模様の力戦から先手は堅さ、後手はバランスとお互いの持ち味が出る展開でしょう。私は後手を持つとあっさり負けてしまいそうながら、いまの自分の将棋の作りだと持ちそうな陣形は後手です。七番勝負で先後が交代にくることを考えると、後手でこれぐらいの局面を作れたら満足でしょうね」 *齊藤優三段「▲7九玉を予想します。渡辺名人が序盤に工夫を凝らし、時間の使い方を見ても大部分が研究範囲だったのかと思います」 *田中大三段「▲7九玉です。渡辺名人と藤井竜王と第一人者同士の対戦で、序盤から細かい駆け引きが繰り広げられました。本命が角換わり、次いで相掛かりと予想されていた中、渡辺名人が先手でこの作戦を選んだのはおふたりの対戦で大きな意味を持つように感じました」 *2日目の椿山荘も曇っている。朝から強い風が吹き、庭園の木々が大きく揺れていた。残り少ないサクラの花も散ってしまうだろう。盤上は決戦間近。午前中に本格的に駒がぶつかりそうだ。 *8時47分、藤井が下座に着いた。52分、渡辺が入室する。56分から1日目の指し手が再現された。 43 7九玉(69) (25:00/04:01:00) *中村修九段が封じ手を開封する。控室でも大本命の▲7九玉だった。 *△6四銀なら▲8八角が予想される。銀を上がらせてから角を退くのがポイントで、▲6六歩〜▲6五歩と銀取りで桂を取ることができる。 *中村修九段、千田七段、三枚堂七段の継ぎ盤では、△6四銀に▲3四歩△同銀▲3五歩△4三銀▲8八角△8六歩▲同歩△8五歩▲6六歩△8六歩▲8五歩△同飛▲9七桂△8三飛▲8五歩が並んだ。先手は桂取り、後手は8筋の継ぎ歩攻めで手を作る。3筋を押さえたほうがいいかは何ともいえないところで、変化が広い。形勢は難しいようだ。 44 9五歩(94) (34:00/04:40:00) *端に手をつけた。▲9五同歩に(1)△9七歩▲同香△9六歩▲同香△3五歩▲同銀△8六歩だろうか。▲同歩なら△同飛の香取りが受からないので、▲2四歩の攻め合いが検討されている。以下△同歩▲同銀△同角▲同飛△2三歩▲2五飛△8七歩成▲8四歩△7八と▲同玉△8一飛▲6五飛が並び、一気に終盤に突入する。これは読んでいてもおかしくない順だ。 *節約する(2)△9六歩も考えられる。▲同香なら△8六歩▲同歩△同飛でやはり香取りがかかる。9六に歩を垂らすのは手渡しの意味合いが強く、持ち歩が2枚になれば△9七歩成▲同香△9六歩▲同香△8六歩▲同歩△同飛とできるものの、歩を渡さないで放置されたときに手が悩ましい。次に△9五香と走っても、▲9八歩で攻めにならない。ただ、3筋で歩がぶつかっているので、先手が歩を渡さずに有効な手を指すというのも悩ましい。 *三枚堂七段「とりあえず、端に手がつくとわからなくなります。攻めている側は単純でも、受ける側は難しいです」 *中村修九段「△8三飛は端攻めと継ぎ歩攻めと相性が悪いのかと思っていました。△8六歩に手抜かれて、△8七歩成に▲8四歩と飛車を止める変化があるからです。しかし、8一飛型だと端を攻めたときに▲9四歩△同香▲9三角成とする変化が出てくるので、8三飛型はそれを消している意味もあるのですね」 *渡辺の手が止まっている。10時に午前のおやつが出された。渡辺は「ショートケーキ・フルーツなし」、「アイスコーヒー」、藤井が「東京雲海プリン(苺)・フルーツ添え」、「アイスティー」。 *時刻は10時30分になり、記録係が齊藤優三段から田中大三段に交代した。控室に戻ってきた齊藤優三段は「△9五歩に渡辺名人は頷かれていましたが、藤井竜王が席を外すと『いや、そっかー』とつぶやいていました」と話す。 45 同 歩(96) (72:00/05:13:00) *この一手。1時間12分も考えたのは、先の先まで読んだと思われる。藤井は9七と9六、どちらに歩を垂らすか。 * *(41手目棋譜コメントの続き) *羽生が名人戦第6局で「3連勝4連敗」の不安を抱えたと記した。その大逆転劇を将棋界で初めてやってのけたのが、渡辺だ。2008年の第21期竜王戦七番勝負は、羽生と初代永世竜王を懸けた大勝負になった。最終局は二転三転の激戦を渡辺が制している。 *本局の渡辺の羽織は、初代永世竜王を獲得してきたときに身に着けていたもの。柄が扇子で、末広がりのため縁起がいい。 *白瀧呉服店は渡辺の和服をずっと管理しており、袴などの組み合わせも一任されている。初代永世竜王を決めた羽織を名人戦の開幕局に選んだのも、白瀧呉服店だ。この羽織が「勝負羽織」だという認識は、白瀧呉服店と渡辺でそれとなく共有されているという。 *渡辺は開幕前の朝日新聞インタビューで「藤井さんがこれだけ勝って七冠に向けて名人戦に出ていくというところで、自分が名人を持っているという状況に責任を感じます。それってもう、巡り合わせじゃないですか。これはやっぱり将棋史の一ページに残ることは間違いない。その巡り合わせに対する責任を感じることが多いですね」と語っている。 * *【YouTubeチャンネル「囲碁将棋TV -朝日新聞社-」:渡辺明名人インタビュー 藤井聡太竜王の「記憶のパワープレー」とは〜聞き手・村瀬信也、北野新太【第81期将棋名人戦】】 *https://youtu.be/e3gvA3jhmB8?t=626 * *【朝日新聞デジタル(要会員登録)・「藤井聡太竜王の角換わりは記憶のパワープレー」 渡辺明名人が語る】 *https://digital.asahi.com/articles/ASR417WVRR41UCVL00Q.html?iref=pc_rellink_01 * *毎日新聞のインタビューでは、第72期ALSOK杯王将戦七番勝負の藤井−羽生善治九段戦を分析し、「自分にはできない」と話している。また第48期棋王戦コナミグループ杯五番勝負で、全局角換わりにした理由も明かした。 * *【YouTubeチャンネル「毎日新聞」:渡辺明名人「ベスト尽くすだけ」 一問一答 第81期名人戦】 *https://www.youtube.com/watch?v=3VtiiN60oH0 *【毎日新聞:渡辺明名人「ベスト尽くすだけ」 一問一答 第81期名人戦】 *https://mainichi.jp/articles/20230403/k00/00m/040/083000c * *※局後の感想※ *△9七歩は▲同香△9六歩▲同香△3五歩▲同銀△8六歩▲同歩△同飛▲2四歩△同歩▲同銀△同銀▲同飛△2三歩▲2五飛△9八銀▲8八金が並べられた。「自信はない」と渡辺、「切らされてしまいそう」と藤井。 46 9六歩打 ( 8:00/04:48:00) *藤井は△9六歩と控える攻めを選んだ。 *午後からの現地大盤解説会(事前申し込み制で、締め切り済み)を担当する、佐藤天彦九段が控室に来訪した。中村修九段、三枚堂七段と継ぎ盤を挟む。 *佐藤天九段「形勢は互角です。先手のほうが玉が堅くて、後手がバランスを取るのが難しいでしょう。渡辺名人は力が出やすい展開で、世代的にもなじみがあります。後手は流行っている陣形なので、藤井竜王は違和感がないかもしれませんね。先手は3六の銀をどう動かすかが問われています。後手は居玉ながら6三銀・6二金は好形です」 * *【YouTubeチャンネル「毎日新聞」:盤寿の名人戦 世代交代果たした佐藤天彦九段】 *https://www.youtube.com/watch?v=SLzD7JhfX0M&list=PLL31nAo9xjy0Jd7m07lC5qfMSKJamf6JJ&index=145 *【朝日新聞デジタル:佐藤天彦九段、友としての渡辺明名人 公園で検証したロナウドの不調】 *https://digital.asahi.com/articles/ASR455SNMR43UCVL06V.html * *※局後の感想※ *渡辺「△9六歩は現状でそんなに狙いがあるわけですが、こちらに有効なパスがないです」 *現局面で▲3八飛なら△4五歩が藤井の予定で、先手不満である。角交換になると、△4七角のキズが響きそうだ。 47 2四歩(25) (43:00/05:56:00) *「お、継ぎましたか」と佐藤天九段。△2四同歩に▲2五歩が予想される。 *▲2四歩に代えて、控室では将棋ソフトが示した▲4七銀も掘り下げられていた。△3五歩に▲5六銀△6四銀▲4五歩と攻める構想で、銀を柔らかく繰り替えるのが浮かびにくい。3六銀型で▲4五歩だと角交換後に△5五角があるが、5六銀型ならそれがないのが非常に大きい。 * *※局後の感想※ *渡辺「▲2四歩がいちばんパスに近い手で、刺激の少ない手かなと」 *▲4五歩や▲3四歩は反動がきついので、リスクを押さえてかつ3六銀型を生かす攻めは、2筋の継ぎ歩攻めと判断した。 48 同 歩(23) ( 1:00/04:49:00) *白瀧呉服店によれば、藤井の白い羽織は新調したものだという。爽やかな印象で、新年度にふさわしい。 *開幕前の毎日新聞インタビューで、藤井は現在の課題に「読みを頼り過ぎてしまうところ」と語っている。 * *【YouTube「毎日新聞」:藤井聡太王将、7冠達成のカギは「読み」よりも…名人戦5日開幕】 *https://youtu.be/Ni25U9YuBYc?list=PLL31nAo9xjy0Jd7m07lC5qfMSKJamf6JJ&t=195 * *【毎日新聞(要会員登録):藤井聡太王将、7冠達成のカギは「読み」よりも…名人戦5日開幕】 *https://mainichi.jp/articles/20230403/k00/00m/040/085000c * *朝日新聞の取材には、タイムマネジメントに注意したいと語った。七冠はそこまで意識していないようだ。 * *【YouTubeチャンネル「囲碁将棋TV -朝日新聞社-」:藤井聡太竜王、名人挑戦インタビュー 定番の第1部&この機会に聞きたかった第2部〜聞き手・村瀬信也、北野新太〜【第81期将棋名人戦】】 *https://www.youtube.com/watch?v=lIvhW0jX2fo * *【朝日新聞デジタル(要会員登録):藤井聡太竜王が語る「展開をデザインして勝つ渡辺明名人の戦略性」】 *https://digital.asahi.com/articles/ASR42023SR41UCVL00R.html?iref=pc_extlink * *【朝日新聞デジタル:藤井聡太が駆け上がった6年間 名人挑戦への道、順位戦プレーバック】 *https://digital.asahi.com/articles/ASR3J73QZR3JUCVL04T.html?iref=pc_rellink_08 49 2五歩打 ( 0:00/05:56:00) *△2五同歩なら▲同銀と出ていく。それは棒銀が加速するので、先手満足だ。 *後手は△9七歩成▲同香△9六歩▲2四歩△2二歩▲9六香△3五歩▲同銀△8六歩▲同歩△同飛が有力。以下▲4五歩△9六飛の攻め合いは難解である。 *12時、ここで藤井が16分考えて、昼食休憩に入った。消費時間は▲渡辺5時間56分、△藤井5時間5分。昼食注文は渡辺が「松花堂弁当・はつめじろ添え」、藤井が「天ぷらうどん(冷)」。対局再開は13時。 *時刻は13時半を過ぎたが、まだ藤井は指していない。 *庭園を散策してみると、青空が少し顔をのぞかせる曇り空で過ごしやすい中、心地よい風が椿山荘を駆け抜けていた。あと数日しか持たないであろう、桜吹雪が名残惜しい。椿の花は、対局場の料亭「錦水」のそばで立派に咲いていた。 *1994年の第52期名人戦七番勝負第5局・米長邦雄名人−羽生善治四冠戦のエピソードを思い出す。5月30・31日に群馬県「伊香保温泉」で行われた。毎日新聞に掲載された清水孝晏さんの観戦記によれば、米長は対局室から見える木々の緑のなかで、白く咲いた朴(ほお)の木を見つけ、次のように注文をつけた。 *「あの朴の花をボクの見えるところに飾ってくれませんかね」 *名人にそういわれては、受けがない。観戦記には次のように記されている。 * *天の声にはと、毎日山村記者が、電気工事人のような服装に化けて出掛けたが、「10メートル以上もある木のてっぺんで採れませんでした」と戻ってきた。米長は笑った。もちろん朴の花が欲しいとは、それが自分の側で香れば将棋が勝てるという暗示を求めたのかもしれない。勝負するものはちょっとしたよりどころも大切なのである。 * *本局はもう勝負どころ。庭園に目をやる余裕は、渡辺にも藤井にもないだろう。 *時刻は14時20分。藤井は大長考に沈んだままだ。現地では佐藤天彦九段、飯野愛女流初段による大盤解説会が始まっている。 * *【YouTubeチャンネル「毎日新聞」:<名人戦第1局・大盤解説Live>渡辺明名人(先手) vs 藤井聡太王将(後手)】 *https://www.youtube.com/watch?v=_LadhImWPk8 * *【YouTubeチャンネル「囲碁将棋TV -朝日新聞社-」:<大盤解説Live>渡辺明名人ー藤井聡太竜王 解説・佐藤天彦九段、聞き手・飯野愛女流初段<第81期将棋名人戦第1局?】 *https://www.youtube.com/watch?v=eBnxhR46Aic * *※局後の感想※ *藤井は△4二角だと、▲2四歩△2二歩▲4七銀で自信がなかった。後手は1歩しかないので△9七歩成から攻めるわけにもいかず、かといってゆっくりしていると▲5六銀から▲4五歩と攻められる。 50 3五歩(34) (107:00/06:36:00) *1時間47分も考えて、△3五歩と戻した。控室では先に△9七歩成といわれていた。千田七段と三枚堂七段が手を進める。▲3五同銀に△3四歩は、▲2四銀なら△4二角で先手の飛車先を重くさせることができそうだが、▲2四歩△2二歩▲2三歩成△同歩▲2四歩で先手よし。途中、△2三同金は▲2四歩△1四金▲2三歩成△同歩▲4四銀から飛車を成り込めばいい。やはり、本譜も後手が持ち歩を増やして端攻めを狙う可能性が高い。 51 2四歩(25) ( 3:00/05:59:00) *先に2筋を利かせる。△2二歩と受けさせてから、▲3五銀と払うつもりだ。 52 2二歩打 ( 0:00/06:36:00) *2筋を屈服させたものの、後手玉は居玉なのでそこまで響かない。どちらかといえば、歩を使わせて攻めの威力を低下させた意味のほうが大きい。 53 3五銀(36) ( 0:00/05:59:00) *ひとまず、銀が五段目に出て右銀の顔は立った。 54 9七歩成(96) ( 0:00/06:36:00) *▲9七同香に△9六歩▲同香△8六歩▲同歩△同飛と攻める。 *15時を過ぎ、おやつが出された。渡辺は「東京雲海プリン(苺)・フルーツなし」、「アイスコーヒー」。藤井は「椿茶(アイス)」、「オレンジジュース」。現局面までの消費時間は▲渡辺5時間59分、△藤井6時間36分。 55 同 香(99) (35:00/06:34:00) *▲9七同香に渡辺が35分使い、ふたりの消費時間はほぼ並んでいる。 56 9六歩打 ( 0:00/06:36:00) *▲9六同香に△8六歩▲同歩△同飛と攻め込まれるものの、▲3四歩△4二角▲2三歩成△同歩▲4四銀△同銀▲同角で先手は攻め合いに持ち込める。やはり形勢は難しい。終盤に突入する順なので、先の先を読まないと飛び込めない順のようだ。 *最後の▲4四同角に△6六歩や△8八歩▲同角△6六歩▲同角△5五銀の攻め筋が発見された。まず単に△6六歩は▲同角だと△5五銀なので、▲同金と取られたときが問題になる。後手が角を6六に呼び込みたいなら、後者の△8八歩▲同角△6六歩▲同角△5五銀のほうがいい。ただ、最初の△8八歩に▲8七銀△8九歩成▲同玉と粘り強く指す順もあるので、読まないといけない変化が多い。 57 同 香(97) (18:00/06:52:00) *△8六歩▲同歩△同飛までは、変化の余地がない。 58 8六歩打 ( 0:00/06:36:00) 59 同 歩(87) ( 0:00/06:52:00) 60 同 飛(83) ( 0:00/06:36:00) *▲3四歩と打ちたいが、△4二角と引かれると角が端に利いてきて攻めに使われる。それならば、現局面で▲6四歩△同銀▲3四歩と攻めたほうがよい。以下△4二角と逃げられても、今度は角の働きが悪い。 * *※局後の感想※ *▲2三歩成△同歩▲2四歩△同歩▲同銀の攻めは、「後手の持ち歩の少なさを主張していたのがなくなってしまう」と渡辺。 61 6四歩打 ( 1:00/06:53:00) *手筋の叩き。 62 同 銀(63) ( 1:00/06:37:00) 63 3四歩打 ( 0:00/06:53:00) 64 4二角(33) ( 0:00/06:37:00) 65 2三歩成(24) ( 0:00/06:53:00) *歩を成り捨てて、飛車先と角道を軽くする。 * *※局後の感想※ *▲2三歩成を入れないほうが後手の持ち歩が1枚減るので攻めを緩和できた可能性はあるが、渡辺は「そういう手を考えないといけないようでは局面として苦しい」と述べた。 66 同 歩(22) ( 5:00/06:42:00) 67 4四銀(35) ( 0:00/06:53:00) *控室では、△4四同銀▲同角△8八歩(▲同角は△6六歩▲同角△5五銀)の評価が高まっている。見つけたのは休み番の記録係・齊藤優三段。控室では「△8八歩▲同角△6六歩は気がつきにくい」「この攻めがあるなら、直前の▲2三歩成は歩を渡すのでよくなかったか」「でも自然な手ですよね」ともいわれた。 68 同 銀(43) (11:00/06:53:00) 69 同 角(66) ( 0:00/06:53:00) *※局後の感想※ *△8八歩▲同金△5五銀▲1一角成も並べられた。 70 6六歩打 ( 0:00/06:53:00) *△8八歩ではなく、△6六歩だった。▲同角は△5五銀が一石二鳥で、角の利きも通る。しかし▲6六同金△8八歩▲8七銀と辛抱して、まだまだねじり合いが続く。 71 同 金(67) ( 4:00/06:57:00) *※局後の感想※ *藤井「△9八銀は▲8八銀で細いです」 72 8八歩打 ( 1:00/06:54:00) *16時ごろの局面。現局面までの消費時間は▲渡辺6時間57分、△藤井6時間54分。 *▲8八同金は△8七銀でいきなり受けが難しくなる。8八に角が利いていれば△8七銀に▲9七金で受かっているのだが、角筋は直前の△6六歩の叩きで消えている。 *控室では▲8七銀△8九歩成▲同玉△8一飛▲8六歩△3三歩を検討中。「難しい」のつぶやきが漏れる。 * *※局後の感想※ *▲8七銀△8九歩成▲同玉△8一飛▲8六歩△3三歩は、「現実的に手がないかな」と渡辺。以下▲2五飛は△7三桂打で「駒損ですからねぇ」と否定的だった。 73 同 金(78) (34:00/07:31:00) *▲8八同金は控室で予想されていなかった。着手後、渡辺は席を外している。(1)△8七銀は大丈夫なのか。▲同金は△同飛成の詰めろで普通は受けがない。▲7七銀は△同桂成▲同金△8八銀打▲6八玉△7七銀成▲同玉△7六銀成▲同金△8九飛成でまずい。 *どうやら、△8七銀には▲9七銀△8八銀不成▲同銀△6九金▲同玉△8八飛成に▲7九金と叱りつけて勝負するようだ。飛車を成られるものの、先手は▲1一角成〜▲2一馬の楽しみが残っている。 *佐藤天九段「34分考えての▲8八同金は(勝負どころと判断して時間を)投入した感じがあります」 *(2)△8七歩もあるようで、▲9七金なら△8八歩成▲6九玉△7九と▲同玉△8八銀で決まっている。ただ、▲9八金△9六飛▲9七銀△9五飛▲9六歩△8五飛▲1一角成は何ともいえない。 *17時、ここで藤井が25分考えて、30分間の休憩に入った。消費時間は▲渡辺7時間31分、△藤井7時間19分。例年は対局者に軽食のおにぎりが用意されるが、渡辺は天ぷらそば(冷)を注文した。 *前期から、名人戦2日目夕方の休憩は時間が変更された。18時から30分間だったのが、17時から30分間になったのだ。 * *【毎日新聞(要会員登録):「味が悪かった」規定変更 名人戦、今期から何が変わるのか】 *https://mainichi.jp/articles/20220403/k00/00m/040/063000c * *ちなみに1994年の第52期名人戦七番勝負第5局・米長邦雄名人−羽生善治四冠戦では、優勢だった米長の提案で2日目夕方の休憩がなしになった。結果は米長勝ち。 *清水孝晏さんが書いた毎日新聞の観戦記「夕食抜きの戦い宣言」を引用する。 * *夕食休みの六時が迫って立会の丸田九段が入室すると「夕食なしでもいいですかね」と米長。「相手の方との相談で――」の丸田九段に「いいですよ」と羽生。 *控室に戻って来た丸田九段は「返事がむずかしい。うっかりハイといって、羽生さんががんばって逆転したら、ナゼあそこでハイなんていったの――といわれるのもイヤだもんね」 *このあと丸田が心配したように妙にもつれてきた。控室の棋士たちも「なぜ、米さんは休まなかったのか」「自分の考慮時間だから休憩を利用する手だったよ」「いやいや危ないようでも読み切りなんですよ」と喧々囂々(けんけんごうごう)。 * *※局後の感想※ *△8七歩は▲9八金△9六飛▲9七銀が渡辺の予定で、▲1一角成〜▲2一馬を間に合わせるつもりだった。 74 8七銀打 (25:00/07:19:00) *再開後、藤井はすぐに△8七銀を着手した。 75 9七銀打 ( 0:00/07:31:00) *この一手の受け。▲9七金は△8八銀不成で8筋を破られた。 76 8八銀(87) ( 0:00/07:19:00) 77 同 銀(97) ( 0:00/07:31:00) 78 6九金打 ( 1:00/07:20:00) *金を捨てる。▲6九同玉に△8八飛成と銀を取って、竜を作る。 79 同 玉(79) ( 0:00/07:31:00) 80 8八飛成(86) ( 0:00/07:20:00) 81 7九金打 ( 1:00/07:32:00) *渡辺は辛抱が続く。△8七竜は▲8八歩△9六竜と進み、竜が先手玉から遠のく。それよりは、△9八竜で△8八歩を狙ったほうが厳しい。 82 9八竜(88) ( 0:00/07:20:00) *(1)▲1一角成の攻め合いは△8八歩▲2一馬△8九歩成▲3二馬△7九と▲5八玉に、△1五角が△4八金▲6七玉△6八竜からの詰めろになって後手勝ちとされた。しかし(2)▲8八歩と受けても△8七歩▲同歩△5七桂成(▲同銀は△2八竜)で困る。検討陣は何かないかと探している。(2)▲8八歩△8七歩に同歩ではなく、▲4一銀△同玉▲6二角成と攻め合いはどうかといわれている。 *大盤解説会の佐藤天九段は「△9八竜は手番がくるので、先手からすれば少し読みにくい。渡辺名人は読み直しているのでは」と話す。 *渡辺が20分強考えて、時刻は18時を過ぎた。 83 1一角成(44) (28:00/08:00:00) *28分の考慮で▲1一角成の攻め合いを選ぶ。現局面までの消費時間は▲渡辺8時間0分、△藤井7時間20分。渡辺の残り時間は1時間になった。 *△8八歩だけでなく、△5七桂成▲8八歩△6八成桂▲同玉△8七歩も考えられるところ。継ぎ盤では△8八歩だと(1)▲2一馬△8九歩成▲3二馬△7九と▲5八玉に△1五角が詰めろで後手勝ちとされていた。大盤解説会の佐藤天九段もひとめで見えていた順で、プロからすれば当然なのだろう。 *検討陣は△8八歩に(2)▲7七銀!というトリッキーな受けを見つけた。まず△同桂成▲同桂は飛車の横利きが通り、△8九歩成に▲9八飛があるので後手が妙に攻めにくい。ほかに△5七桂不成▲5九玉△1五角▲2六歩と辛抱し、▲2一馬に期待する。 84 8八歩打 (22:00/07:42:00) *本命の△8八歩が指された。大盤解説会の佐藤天九段は▲7七銀を知ると「びっくりしました。本当に指しますかね」「糸谷(哲郎八段。同い年)さんじゃないけど、思わず声が裏返ります」となぜか高い声で悲鳴を上げている。「超絶技巧手」とも評した。 *▲7七銀に△5七桂成なら、▲8八飛とぶつけたり、▲8八金と飛車を追ってどうか。 *19時、渡辺はあぐらでコンコンと考えている。終盤なので、間違えるとすぐに寄ってしまう。19時7分、渡辺の残り時間は20分になった。 * *※局後の感想※ *▲7七銀は「何とかなると思っていた」と藤井。渡辺も否定的で、「こういう手が出るようでは流れがそもそもおかしい」と語った。 *▲9九香△同竜▲2一馬も検討された。 85 2一馬(11) (42:00/08:42:00) *残り18分になるまで考えて、シンプルに攻め合う。42分の考慮だった。控室の検討手順、△8九歩成▲3二馬△7九と▲5八玉△1五角で後手勝ちという結論を覆せるか。 *佐藤天九段「ここで42分考えたというのを見てほしいですね。この厳しい局面で目の前には藤井竜王、舞台は名人戦。ここで腰を落として考えるというのは、すごく精神力がいることなんです」 86 8九歩成(88) ( 5:00/07:47:00) 87 3二馬(21) ( 0:00/08:42:00) *△1五角に▲5四馬や▲4二銀はどうか。馬で上部を開拓すれば、詰めろが解除できる。▲4二銀は△同角なら▲4一金から角を取れ、△6一玉ならそこで▲5四馬と引いて銀を置いた分だけ後手玉が狭くなったと主張する。 88 7九と(89) (16:00/08:03:00) *慎重に16分考えて、金を取った。このと金は取れない。 89 5八玉(69) ( 0:00/08:42:00) 90 1五角(42) ( 0:00/08:03:00) *気持ちのよい飛び出し。自陣に閉じ込められていた角が最終盤で主役になった。 *藤井は席を外した。藤井が戻ってからも、渡辺は考え続けている。残り10分を切った。小刻みに時間を使ってスムーズに進めていないことを思うと、やはり苦しいと感じているのだろうか。 * *※局後の感想※ *▲5四馬は△4八金▲6七玉△4七銀で受けなし。▲3三歩成も△4八金があり、▲6七玉は△6八竜▲5六玉△4四銀で受けなし、渡辺は「▲4八同飛しかないけど、いかにも詰み筋に入る」と話した。 91 4二銀打 (14:00/08:56:00) *残り18分のうち、14分を割いて▲4二銀を放った。△同角は▲4一金から角を回収されてしまう。 *佐藤天九段「王手は追う手なので▲4二銀は見えにくいですが、実戦的に嫌な手です」 *控室では△6一玉▲4三馬△5二金▲5四馬△6三銀▲4四馬で食いつけないかと検討している。馬で5筋の歩を取れば先手玉は上部を開拓でき。また馬が4四にいれば▲7一金を狙える。 *藤井の考慮中に20時を過ぎた。現局面までの消費時間は▲渡辺8時間56分、△藤井8時間3分。 92 6一玉(51) (18:00/08:21:00) 93 5四馬(32) ( 1:00/08:57:00) *歩を取り、△4八金と攻められても▲6七玉△6八竜▲同玉△7七銀▲6七玉△6六銀成▲同玉と逃げ出せるようになった。 94 4八金打 ( 1:00/08:22:00) *▲4八同飛は△同角成▲同玉△6八竜と迫られる。 95 6七玉(58) ( 1:00/08:58:00) *△7八竜▲5六玉△4七銀は、▲4五玉で「王手は追う手」になってしまう。後手は一気に仕留められないなら、△6三銀と自陣に手を戻すことになりそうだ。 96 4二角(15) ( 0:00/08:22:00) *意外なことに銀を角で取った。金が浮き駒になり、また角が不安定になる。ただ、先手もなかなか後手玉に迫れない。▲6三歩は△同金▲同馬に△6八竜から詰み。馬が移動すると、先手玉が6六まで追われたときに△5五銀打で詰む。 97 4八飛(28) ( 0:00/08:58:00) *先手は次に▲6三歩が入れば、後手玉は一手一手の寄りとなる。 98 5三銀打 ( 0:00/08:22:00) *持ち駒を増やしてから、自陣に駒を埋める。 99 4三馬(54) ( 0:00/08:58:00) 100 5二銀打 ( 0:00/08:22:00) *バンバン玉を固める。角を手にすれば、△7八角が上部脱出を防げる。 101 4二馬(43) ( 0:00/08:58:00) *馬を逃げては、△6九と〜△6八とで困っていた。 102 同 銀(53) ( 0:00/08:22:00) 103 5四桂打 ( 0:00/08:58:00) *もう自玉は手を入れても延びないと、地道にはがしにいった。 *△8七竜▲5六玉△4四桂▲4五玉△2七角▲4四玉△5三銀直▲3五玉△5四角成が明快だという。急所に馬を作って桂を取ってしまえば、不敗の陣を築ける。 *渡辺は遠い目をしている。藤井は前傾姿勢だ。 104 8七竜(98) (12:00/08:34:00) *藤井の残り時間は30分を切った。 *20時30分、渡辺は一分将棋に入った。 *佐藤天九段「▲5八玉△3六角▲4七角△5四角▲5六香と勝負しますか。苦しいですけど」 105 7七香打 ( 1:00/08:59:00) *我慢の合駒。 106 7八と(79) ( 4:00/08:38:00) *と金の活用が間に合った。▲6二桂成と取られても、△同玉でまだ銀3枚が守りについている。 107 4二桂成(54) ( 0:00/08:59:00) *響きは薄いが、ほかの手も難しかった。 108 6八と(78) ( 0:00/08:38:00) 109 5六玉(67) ( 0:00/08:59:00) 110 2七角打 ( 0:00/08:38:00) *△4四桂からの詰めろ。▲4五歩と受けても、△7七竜で一手一手の寄りとなる。 *この局面で渡辺が投了した。藤井が軽い仕掛けから端でうまく手をつなぎ、最後は正確な見切りで勝ちきった。終局時刻は20時39分。消費時間は▲渡辺8時間59分、△藤井8時間38分。第2局は4月27・28日(木・金)に静岡県静岡市「浮月楼」で行われる。 * *※局後の感想※ *「さばき合ってからは負け。変な粘り方しかない」と渡辺。トリッキーな手で仮に互角だとしても、そういう手でしか均衡を保てないようではそもそも将棋の作りとして納得できないようだ。藤井は軽い仕掛けから中盤を抜け出し、居玉ながらうまくまとめた。 111 投了 ( 0:00/08:59:00) まで110手で後手の勝ち