# --- Kifu for Windows (Pro) V6.65.64 棋譜ファイル --- 対局ID:16654 記録ID:660a58bdf83871a3e80c28a7 開始日時:2024/04/10 09:00 終了日時:2024/04/11 21:22 棋戦:第82期名人戦七番勝負第1局 戦型:横歩取りその他 持ち時間:9時間 秒読み:60秒 消費時間:141▲537△539 場所:東京都文京区「ホテル椿山荘東京」 備考:昼休前22手目26分\n2日目昼休前50手目12分・夕休前64手目43分\n封じ手時刻:18:30<40手目>\n 先手年齢:21 後手年齢:33 リーグ成績:▲0勝0敗△0勝0敗 振り駒:3,0,藤 先手消費時間加算:0 後手消費時間加算:0 昼食休憩:12:00〜13:00 夕食休憩:17:00〜17:30 昼休前消費時間:22手26分 手合割:平手   先手:藤井聡太名人 後手:豊島将之九段 先手省略名:藤井聡 手数----指手---------消費時間-- *藤井聡太名人(八冠)に豊島将之九段が挑戦する第82期名人戦七番勝負が開幕する。藤井が初防衛に成功するのか、それとも豊島が第77期以来、5期ぶりの復位を果たすのか。第1局は4月10、11日(水・木)の両日に東京都文京区「ホテル椿山荘東京」で行われる。対局開始は10日9時。持ち時間は各9時間。第1局の先後は振り駒によって決定する。昼食休憩は12時〜13時、2日目夕休憩は17時〜17時30分。おやつは10時と15時。封じ手は1日目18時30分の時点で手番の棋士が行う。本局の立会人は青野照市九段。朝日副立会人は中村太地八段、毎日副立会人は千田翔太八段、記録係は田中大貴三段(北島忠雄七段門下)と齊藤優希三段(深浦康市九段門下)が務める。観戦記は朝日新聞を君島俊介さん、毎日新聞を椎名龍一さんが担当する。 *現地大盤解説会は解説を藤井猛九段、聞き手を脇田菜々子女流初段が担当する(事前申し込み制で、申し込みはすでに締め切られています)。 * *1日目の朝を迎えた。8時47分、先に入室したのは挑戦者の豊島。下座に向かい、盤側の関係者に一礼してから腰を下ろす。信玄袋から懐中時計など対局に必要な道具を取り出す。 *藤井の登場は8時50分。上座に向かい、盤側の関係者に一礼してから着座する。信玄袋から扇子やフェイスペーパーなどを取り出し、所定の位置に置く。おしぼりで手を拭いて、気息を整えてから一礼して駒箱に手を掛けた。両者は駒を一枚一枚、丁寧にゆっくりと並べていく。 *8時56分、大和証券グループ本社の中田誠司会長が振り駒を行い、歩が3枚出て、藤井の先手番に決まった。 *9時、立会人の青野九段の合図で対局が始まった。 * *【主催=朝日新聞−将棋】 *http://www.asahi.com/shougi/ *【主催=毎日新聞−将棋】 *https://mainichi.jp/shogi/ *【協賛=大和証券グループ本社】 *https://www.daiwa-grp.jp/ *【協力=藤田観光】 *https://www.fujita-kanko.co.jp/ *【名人戦棋譜速報】 *http://www.meijinsen.jp/ *【将棋連盟ライブ中継|日本将棋連盟】 *https://www.shogi.or.jp/lp/mr201704/ * *(棋譜・コメント入力=琵琶) *[棋譜表示の*はコメント入りの指し手。【】は各種リンク・お知らせ。#は局後の感想が追記された指し手] 1 2六歩(27) ( 0:00/00:00:00) *◆藤井 聡太(ふじい そうた)名人(竜王・王位・叡王・王座・棋王・王将・棋聖)◆ *2002年7月19日生まれ、愛知県瀬戸市出身。杉本昌隆八段門下。2016年、四段。2021年、九段。棋士番号は307。 *タイトル戦登場は23回。獲得は竜王3期、名人1期、王位4期、叡王3期、王座1期、棋王2期、王将3期、棋聖4期の計21期。棋戦優勝は10回。 2 3四歩(33) ( 0:00/00:00:00) *◆豊島 将之(とよしま まさゆき)九段◆ *1990年4月30日生まれ、愛知県一宮市出身。桐山清澄九段門下。2007年、四段。2019年、九段。棋士番号は264。 *タイトル戦登場は19回。獲得は竜王2期、名人1期、王位1期、叡王1期、棋聖1期の計6期。棋戦優勝は5回。 3 7六歩(77) ( 1:00/00:01:00) *両者の対戦成績は藤井22勝、豊島11勝。現在、藤井が9連勝中。昨年8月4日に行われた第71期王座戦挑戦者決定戦以来の顔合わせとなる。 4 9四歩(93) ( 1:00/00:01:00) *豊島は早くも趣向を凝らした。控室では「振り飛車が見られる可能性もあるのでは」という声が聞かれる。 5 2五歩(26) ( 1:00/00:02:00) *藤井は▲2五歩と突く。定跡形にはなりそうにない。控室に早くも歓声があがる。 6 3二金(41) ( 0:00/00:01:00) *対局室から控室に戻ってきた青野九段は「序盤から力戦になりますね」とつぶやく。千田八段は「完全的中ですね」と笑顔で拳を握る。 *手元のデータベースには14局の前例があり、先手が10勝4敗と大きな差がついている。前例は▲9六歩、▲2四歩、▲6八玉、▲7八金が指されている。その14局に両者の名前はない。藤井も豊島も未知の局面に直面している。 7 6八玉(59) ( 3:00/00:05:00) *藤井の指し手は▲6八玉。△8四歩を誘って「やってこい」という声が聞こえてきそうな玉上がりである。 8 8四歩(83) ( 1:00/00:02:00) *豊島の指し手は△8四歩。▲6八玉に反応した一手である。開始早々に両者の気合がぶつかる。 * *本局は朝日新聞社と毎日新聞社のYouTubeチャンネル、ABEMAで中継されている。ABEMAの1日目の解説者は屋敷伸之九段と小林裕士八段、聞き手は竹部さゆり女流四段と武富礼衣女流初段。2日目の解説者は佐藤康光九段と北浜健介八段、聞き手は本田小百合女流三段と山口恵梨子女流三段が担当する。 * *【囲碁将棋TV -朝日新聞社-】 *https://www.youtube.com/@igoshogitv *【将棋・囲碁ch 毎日新聞】 *https://www.youtube.com/@shogiigo_mainichi *【ABEMA(1日目)】 *https://abema.tv/channels/shogi/slots/CKbzSm61d4RRWX *【ABEMA(2日目)】 *https://abema.tv/channels/shogi/slots/CKbzSSrqATCBYT 9 2四歩(25) ( 6:00/00:11:00) *【藤井の公式戦成績】 *通 算=365勝71敗(0.837) *昨年度=46勝8敗(0.852) *今年度=1勝0敗(1.000) 10 同 歩(23) ( 0:00/00:02:00) *【豊島の公式戦成績】 *通 算=598勝304敗(0.663) *昨年度=24勝20敗(0.545) *今年度=0勝1敗(0.000) 11 同 飛(28) ( 0:00/00:11:00) *2筋で歩が交換になった。△8八角成▲同銀△3三角で飛車と銀の両取りが掛かるが、▲2一飛成で先手が指せるという判断のようだ。千田八段は「先手の竜が大きいですし、後手は8二飛の働きが弱い。さらに後手は8八馬単体で先手陣を攻略するのは難しいです」と先手よしの理由を解説する。 12 8五歩(84) ( 1:00/00:03:00) *ホテル椿山荘東京の周辺は椿が自生する景勝地で、南北朝のころ「つばきやま」と呼ばれていた。1878年、伊藤博文と共に明治政府の最高指導者となり、内務卿・枢密院議長・総理大臣等を歴任した軍人・政治家の山縣有朋が、私財を投じて「つばきやま」を購入し、庭や邸宅を建築して「椿山荘」と命名した。椿山荘の庭園は「日本で最も天然趣味に優れた名園」と高評価を受けており、東京の人気観光スポットのひとつとして人気を博す。この時期は庭園の桜も見どころのひとつとして連日にぎわっている。ホテル椿山荘東京で名人戦が行われるのは今期で17期連続となる。 * *豊島はさらに飛車先の歩を伸ばす。1日目午前から激しい順になるかもしれない。 13 7八金(69) ( 1:00/00:12:00) *データベースの前例は4局。△8六歩が3局、△2三歩が1局指されている。結果は先手後手ともに2勝2敗。 * *朝日新聞と毎日新聞で七番勝負の特集が掲載された。いずれも七番勝負への期待感が高まる内容になっている。 * *【藤井聡太名人「人生で一番集中した時間」 豊島将之九段と名人戦へ:朝日新聞デジタル】 *https://digital.asahi.com/articles/ASS4546T4S42UCVL004.html *【豊島将之九段「もうちょっとできた」はずだから 藤井聡太名人へ挑戦:朝日新聞デジタル】 *https://digital.asahi.com/articles/ASS453GFYS3WUCVL014.html *【藤井聡太名人「何が本命?」 羽生善治九段以上に読めぬ挑戦者の戦型 | 毎日新聞】 *https://mainichi.jp/articles/20240405/k00/00m/040/307000c *【苦手意識なし 藤井聡太名人に挑む豊島将之九段が狙うタイトル奪還 | 毎日新聞】 *https://mainichi.jp/articles/20240405/k00/00m/040/315000c *【藤井聡太名人VS豊島将之九段 勝負を支える“おやつ戦略”と筋トレ | 毎日新聞】 *https://mainichi.jp/articles/20240405/k00/00m/040/319000c *【将棋:第82期名人戦七番勝負 10日開幕 連覇か、復位か | 毎日新聞】 *https://mainichi.jp/articles/20240408/ddm/010/040/022000c 14 8六歩(85) ( 2:00/00:05:00) *名人戦・順位戦は朝日新聞社と毎日新聞社が主催する棋戦。名人戦七番勝負は大和証券グループ本社が協賛する。A級、B級1組、B級2組、C級1組、C級2組の5クラスでリーグ戦を行う。最も下のクラスのC級2組から昇級を重ねていき、最上位クラスのA級で優勝した棋士が名人への挑戦権を獲得する。名人と挑戦者による七番勝負は例年4月から6月にかけて行われる。現在のタイトル保持者は藤井聡太名人。 15 同 歩(87) ( 0:00/00:12:00) *藤井の名人戦成績は4勝1敗(0.800)。前期七番勝負で渡辺明名人(当時)を4勝1敗で破り、初の名人位に就いた。名人戦登場2回。名人獲得1期。名人位獲得によって七冠同時制覇も果たした。 16 同 飛(82) ( 0:00/00:05:00) *豊島の名人戦成績は6勝4敗(0.600)。第77期七番勝負で佐藤天彦名人(当時)を4勝0敗で破り、初の名人位に就いた。名人戦登場3回。名人獲得1期。豊島は第82期A級順位戦で7勝2敗の成績を挙げて優勝し、挑戦権を獲得した。対藤井聡戦で11勝し、最も多く勝っている棋士として知られる。 * *前例は3局に減った。1号局は2015年8月に行われた第9回朝日杯将棋オープン戦一次予選の▲菅井竜也六段−△竹内雄悟四段戦(肩書きはいずれも当時)。2号局は2023年8月に行われた第17回朝日杯将棋オープン戦一次予選の▲村山慈明八段−△平藤眞吾七段戦。もう一局は先月の3月21日に行われた第37期竜王戦ランキング戦2組の▲高見泰地七段−△糸谷哲郎八段戦である。次の一手は1号局が▲2六飛、残る2局が▲3四飛と横歩を取っている。先手が2勝1敗で、勝った2局はいずれも▲3四飛だった。千田八段は「藤井さんは飛車を引くような手は指さないと思います」という。 17 3四飛(24) (26:00/00:38:00) *藤井は26分の考慮で▲3四飛と歩を取った。千田八段が予想していた歩を取る積極的な指し手を選んだ。前例は△4一玉と△8八角成が指された。 *10時、1日目午前のおやつは藤井が東京雲海クッキーサンド(バター&レーズン)フルーツ添え、アイスティー。豊島がフルーツ盛り合わせ(マスクメロン、さくらんぼ、あわゆきいちご、とちおとめ、いちじく、ビワ、ルビーレッド)。 18 8八角成(22) ( 7:00/00:12:00) *豊島は7分の考慮で角を交換した。 19 同 銀(79) ( 0:00/00:38:00) *昨日16時30分から検分が行われた。立会人の青野九段の合図で藤井が駒箱に手を掛けて、盤上に駒を散らす。検分で全ての駒を並べることはなく、藤井が玉、左金、右銀、5七歩、豊島が玉、左金、右銀、飛車を置いて確認した。特に問題はなく、約5分で終了した。本局で使用する盤と駒は将棋連盟が所有する名人駒と名人盤と呼ばれる逸品。駒は奥野一香作の宗歩好で、双玉仕様になっている。いずれも椿山荘の名人戦第1局でのみ使用される。 20 2七角打 ( 1:00/00:13:00) *10時4分の着手。 *金取りに角を打ち込む。▲3八銀には△4五角成と馬を作る狙いのようだ。前例の▲高見七段−△糸谷八段戦と同じように進んでいる。中村太八段は「後手は△9四歩の代わりに△3三角と上がってから角を交換して、この順に進んだ将棋もありますが、その変化と比べて明らかに1手得をしています。ここから▲3八銀△4五角成▲2四飛と進むでしょう。後手は△2三歩と打つと▲2五飛△3四馬▲6五飛△7二銀に▲7七角の両取りで先手が優勢になります。したがって▲2四飛に後手は△2二歩と打つことになります。対して先手は▲7五角と打つ手が目につきます。以下△7六飛▲5三角成△5六歩▲同歩△同飛▲2六馬と進みますが、先手は飛車が狭いので怖い格好です。なお、▲2六馬で▲7五馬と引くと△3五馬で王手飛車が掛かります。先手はできれば▲7五角と打って馬を作って対抗したいところですが、藤井名人はこういった変化を掘り下げて時間を使っているのだと思います」と解説する。横歩取りで▲6八玉と上がる佐々木勇気八段が得意にしている勇気流の変化が絡んでくる。その将棋と違って後手が△9四歩と突いてあることがどう影響を及ぼすか。注目ポイントのひとつといえる。 *11時4分、藤井が手を止めて1時間が経過した。前傾姿勢で盤上を見つめている。青野九段は「通常の横歩取りに比べて△9四歩と▲6八玉の交換が入っている格好で、先手が得をしていそうですよね。先手としては玉上がりをマイナスにはしたくないでしょう」と話す。先手玉が居玉なら△2七角が金取りにはならない。藤井猛九段は「▲3八銀と▲4八金を比較している可能性はありますよね。▲7五角の変化になったときに後手は△5六歩と打ってきますが、▲4八金は5筋に備えている意味がありますから」という。 21 4八金(49) (89:00/02:07:00) *11時33分の着手。▲4八金までの消費時間は、▲藤井2時間7分、△豊島13分。 *前例は▲3八銀だったが、藤井は▲4八金と上がった。前例に別れを告げる。金上がりを見て「ほぉー」と満足げな藤井猛九段。「長考の要因を推測するとそうなりますよね」と続けた。 *12時、この局面で豊島が26分使って昼食休憩に入った。ここまでの消費時間は▲藤井2時間7分、△豊島39分。昼食の注文は藤井が黒毛和牛サーロインステーキ重 米茄子の鴫炊きとともに、ウーロン茶。豊島は松花堂弁当 はつめじろ添え、アイス椿茶。対局は13時から再開する。 *13時、対局が再開された。将棋AIの研究で知られる京都橘大学の松原仁教授が午後の対局室を取材した。後日、毎日新聞に観戦エッセイが掲載される。 *13時30分、再開から30分が経過したが、豊島の右手はまだ盤上に伸びていない。△4五角成▲2四飛△2二歩に▲7五角の筋を掘り下げているのだろうか。以下△7六飛▲5三角成△5六歩のときに4八の金が5筋をカバーしているのが▲4八金と▲3八銀との違いだ。中村太八段は「△4五角成をすぐに指さないということは、以下▲2四飛△2二歩▲7五角△7六飛▲5三角成△4二銀▲5四馬△7四飛▲4五馬△2四飛▲2八歩の順がよくないと感じているからかもしれませんね」と話す。▲5三角成に△5六歩は▲4八金と上がった手が5筋をカバーしているので指しにくい。△4二銀は馬を追う手で、▲5四馬に△7四飛で技ありに見えるが、▲4五馬と馬のほうを取られると、後手は△2四飛と飛車を取れたとしても不満かもしれない。なぜなら4五馬が手厚く、先手陣は飛車を打ち込まれるスキがないからだ。むしろ先手の手持ちの角のほうが使いやすいともいえる。 *14時、現地の大盤解説会が始まった。なお、事前申し込み制で、申し込みはすでに締め切られている。 *14時4分、豊島のこの一手の消費時間が1時間30分になった。前傾姿勢で盤上を見つめている。 * *※局後の感想※ *▲4八金に代えて▲3八銀は△4五角成▲2四飛△2二歩▲7五角△7六飛▲5三角成△5六歩▲同歩△同飛▲2六馬が変化の一例。以下△2六同飛▲同飛△3五馬で王手飛車は掛かるが、▲4六飛で受かる。藤井は「▲3八銀と上がると同じように進んで▲5三角成に△5六歩と打たれてかなり怖い形なので、それに備える意味で▲4八金と上がったけど、▲3八銀に比べると形としてあまりよくないので、進んでみるとあまり思わしい感じじゃないのかなと思っていた」と振り返る。 22 4五角成(27) (102:00/01:55:00) *対局再開。昼食休憩後の指し手。 *豊島は昼食休憩を挟む1時間42分の考慮で△4五角成と馬を作った。この手自体は予想された一手である。 23 2四飛(34) ( 1:00/02:08:00) *藤井は▲2四飛と飛車を逃げる。次に▲2一飛成を見ている。 24 2二歩打 ( 1:00/01:56:00) *△2二歩と低く受ける。代えて△2三歩は▲2五飛△3四馬▲6五飛で後手が▲6三飛成を受けにくい。△6二銀や△7二銀と上がると▲7七角が飛車と香の両取りになってしまうからだ。 *先手としては▲7五角と打って馬を作りにいきたい。なぜなら後手は馬の威力が主張だからである。先手も馬を作ることができれば後手の主張を帳消しにできる。 25 7五角打 ( 6:00/02:14:00) *藤井の指し手は▲7五角。やはり角を打って相手の主張をなくしにいった。 26 7六飛(86) (26:00/02:22:00) *豊島は26分の考慮で△7六飛と歩を取った。 27 5三角成(75) ( 0:00/02:14:00) *藤井はすぐに角を成り込む。先手も馬を作って対抗する。 *ここまでは検討陣の想定していた局面である。ここで後手がどう指すのだろうか。豊島の次の一手に注目が集まる。 *15時、1日目午後のおやつは藤井が桜とピスタチオのマーブルケーキ クリーム&フルーツ添え、リンゴジュース。豊島が桜のきんつば、リンゴジュース。 28 4二銀(31) (12:00/02:34:00) *豊島の指し手は△4二銀。やはり△5六歩では不満と見ているようだ。以下▲5四馬と引かれたときにどう応じるか。△7四飛が飛車の素抜きを見てうまそうに見えるが、▲4五馬と馬を取られ、△2四飛に▲2八歩と打たれてどうか。▲2八歩と打てるのが▲4八金の効果である。▲5四馬に△同馬は▲同飛で、以下△5三歩に▲2四飛と戻られて、後手としては馬を消されてしまうので不満かもしれない。ただ、千田八段は△2四飛に▲2八歩ではなく、馬の利きを生かして▲2七歩と打ちたいという。▲2八歩と打ってしまうと3九の銀が釘付けになってしまい自由に使えないというのが理由のようだ。馬が消えると△2七飛成を与えるが、確かに受けとしては▲2七歩のほうが柔軟である。 29 5四馬(53) (39:00/02:53:00) *藤井は▲5四馬と引いた。39分の考慮で指された。△5四同馬は▲同飛で、後手の主張だった馬を消すことができる。 * 30 同 馬(45) (13:00/02:47:00) *豊島は馬の交換に応じた。 31 同 飛(24) ( 0:00/02:53:00) *後手は主張だった馬が盤上から消えた。後手が歩を1枚損している。控室のモニターを見つめる青野九段は「馬が消えたし歩損だし、明らかに後手が不満な感じがしますけどね」とつぶやく。 32 4一玉(51) ( 1:00/02:48:00) *豊島は玉を4一に寄る。▲8五角の筋が気になるが、後手も△5九角と打ち込む手があるので均衡が取れているということだろうか。 * *※局後の感想※ *「歩損なので、もしかしたら悪くなっている可能性もありますが、▲4八金にさせたという主張で指していってどうかなと思っていました」と豊島。 33 7七桂(89) ( 6:00/02:59:00) *藤井は左桂を跳ねた。飛車の直射をなくして△5九角の筋を防ぐ。先手は1歩得と4枚の持ち歩が生きる展開に持ち込みたい。 *内山あや女流初段が控室を訪れた。早速、中村太八段と継ぎ盤を挟んでいる。ここから△2六飛▲2八歩△8六飛▲8五歩といった順を調べている。 34 7四飛(76) (47:00/03:35:00) *豊島は47分の考慮で△7四飛と引いた。飛車交換を挑む。後手は飛車交換になれば先手陣に比べて一段金の格好がスキのない構えといえそうだ。 35 5六飛(54) (14:00/03:13:00) *藤井の指し手は▲5六飛。飛車交換には応じない。次に▲8三角の狙いを残す。 36 2四飛(74) ( 2:00/03:37:00) *△2四飛と飛車を振り回す。▲8三角を消しながら△2九飛成を見ている。藤井猛九段は「▲2八歩と受けられたときに後手がどう指すか。▲8三角を防ぐ必要があるけど、▲8二歩の筋があるのでどうするのでしょうか。後手は5筋が直通しているのがきついですね」という。 37 2八歩打 ( 8:00/03:21:00) *藤井は▲2八歩と受ける。飛車の成り込みを防ぐ最も自然な一手だ。 *問題は後手の次の一手である。どこに主張を求めていくのだろうか。 38 8四飛(24) ( 2:00/03:39:00) *豊島は△8四飛と8筋に飛車を回った。▲8三角を消している。藤井猛九段と中村太八段の検討では、ここから▲8五歩に後手が△8二飛と辛抱してどうかといわれている。以下▲8六飛には△5三銀がなかなかの手のようで、▲8四歩には△7二銀と上がっておき、▲8七銀△6四銀▲7六銀△7四歩▲5八玉△7三桂が継ぎ盤に並んだ。後手側を持っている藤井猛九段は「ここまで進めば形になっていますね」という。 39 5八玉(68) (28:00/03:49:00) *藤井の指し手は▲5八玉。中住まい玉に立て直し、4八金とのバランスをよくする。自陣を整備する際にいずれ指したい手である。 *豊島が30分以上、手を止めている。このまま封じ手にするようだ。 *18時30分、封じ手の時刻になり、豊島が封じる意思を示した。豊島が40手目に使った消費時間は40分。1日目の消費時間は▲藤井3時間49分、△豊島4時間19分。2日目は9時に対局が再開する。 *現地棋士、女流棋士、記録係に封じ手予想を聞いた。 *【青野九段=△9五歩】「序盤の△9四歩を生かす意味で△9五歩と突きたいです。△9四歩が緩手だったという展開にはしたくはありませんので」 *【中村太八段=△9五歩】「先手が▲5八玉と寄ったことによって7八金が浮き駒になったので、△9六歩▲同歩△9八歩▲同香△8九角の攻めが見込めます。また△7二銀と上がって飛車がどこかの筋に寄った際に、▲8二角と打たれても△9四飛の受けがあるので、△9五歩は価値の高い手だと思います」 *【千田八段=△3一金】「指さないとは思いますが、AI流の△3一金を予想しておきます。後手は横から攻められることになりそうですので、△3二玉と上がれるようにする意味です。エルモ囲いのような感じですね。先手が▲2八歩と打ってあるので2筋から攻められにくいので、それなりに耐久性もありそうです」 *【藤井猛九段=△8二飛】「後手はいずれ右銀を△7二銀か△6二銀と上がることになりますが、できればここで決めたくはないですので。△8二飛と引いて含みを持たせます」 *【脇田女流初段=△7二銀】「△6二銀ですと▲8五歩△8二飛に▲8六飛で受けにくくなります。右銀を活用していければと思います」 *【齊藤優三段=△7二銀】「8二の地点が薄くなるデメリットもありますが、右銀を活用して好形を作りたいです」 *【田中大三段=△7二銀】「他に指し手が難しい局面です。いちばん含みがありながら自陣の発展を考えたときに△7二銀がいいと感じました」 * *2日目の朝を迎えた。8時47分。先に入室したのは豊島。関係者にあいさつをしてから下座に着く。信玄袋から懐中時計など必要なものを取り出す。 *8時48分、藤井が姿を見せた。盤側の関係者にあいさつをしてから上座を占める。信玄袋から小物を取り出して所定の位置に置く。気息を整えてから一礼し、駒を並べ始める。 *駒を初形に配置すると、記録係の田中大三段が1日目の指し手を読み上げる。対局者が盤上に再現していく。 *39手目▲5八玉の局面になると、立会人の青野九段が封じ手の封筒2通を持って対局者の横に移動する。 40 7二銀(71) (40:00/04:19:00) *開封された封じ手は△7二銀だった。△7二銀は脇田女流初段、齊藤優三段、田中大三段が挙げていた。後手陣を引き締める銀上がりである。 *関係者が退出すると、藤井はあぐらになって前傾姿勢で盤上を見つめる。後手は△7二銀以外にもいくつか候補手があっただけに、ここは時間を費やすところかもしれない。 41 8七銀(88) (15:00/04:04:00) *藤井の指し手は▲8七銀。銀を押し上げて後手の飛車にプレッシャーを掛ける。青野九段は「お互いに銀を上がりましたね。後手の△7二銀は▲8五歩〜▲8六飛に備えた手で仕方がなかったのだと思います。できれば右の銀は6二から5三に使っていきたかったはずです。対して先手の▲8七銀は相手の飛車にじわっと圧力を掛けた手です。右側の金銀を▲3八金〜▲4八銀と立て直すことになると思いますので、しばらくはお互いに陣形を整備することになるのではないでしょうか」と解説する。 42 7四歩(73) (18:00/04:37:00) *豊島は△7四歩と突いた。△7三桂の活用を見ながら展開によっては△7五歩から桂頭を攻める手も視野に入れる。相手の歩が切れている筋の歩を伸ばしていくのは将棋の基本のひとつである。 *藤井は早くも羽織を脱いで、前のめりになって盤上をにらむ。 *10時、2日目午前のおやつは藤井が東京雲海プリン(抹茶)フルーツ添え、アイスティー。豊島がフルーツ盛り合わせ。 43 8五歩打 (30:00/04:34:00) *藤井は30分の考慮で▲8五歩と打った。飛車を8筋に押し込めて、相手の駒を押さえ込む方針のようだ。 44 8二飛(84) ( 8:00/04:45:00) *千田八段は△8二飛に先手がどう指すかを検討している。「▲8六飛は△7三銀と上がられてどうでしょうか。かといって▲7六銀〜▲6五銀は桂が跳ねられなくなるので違う気がします。▲9六歩と突くのはどうでしょうか。△7三銀なら▲9五歩△同歩▲9三歩で端を攻めます。以下△9三同香は▲9二歩で、△同飛なら▲8三角△6二飛▲6一角成△同飛▲5二金で王手飛車が掛かります」と千田八段は解説する。 45 8六飛(56) (17:00/04:51:00) *藤井は飛車を8筋に回った。▲8五歩からの継続手である。▲8四歩と伸ばして8筋を攻める狙い。ただ、千田八段が語っていたように△7三銀と上がられたときにうまい攻めがあるかどうか。千田八段は「後手に△7三銀と上がられたときに▲6五桂が利けばいいのですが、△6四銀と桂取りに上がられて、▲8四歩に△8五歩▲同飛△9三桂と対抗されてうまくいくかどうか。以下▲8六飛は△8五歩で飛車先が止まるので▲8三歩成としますが、△8五桂▲8二と△8九飛▲7九歩でどうでしょうか。先手は次に▲8一飛が強烈ですが、△8六歩や△7七桂成など後手にも手段が多く、お互いにとって怖い変化になります。△7三銀と上がられたときに先手がこの変化を選べるかどうか」と解説する。 *その後の検討で藤井猛九段は△7三銀に▲8四歩が有力と見解を示した。その順は△8四同銀に▲4六角と打ち、以下△7三角▲8三歩△同飛▲7三角成△同桂▲5六角。次に▲7四角が受けにくいようだ。▲5六角に△8五歩は▲6六飛で、以下△5二金に▲7四角△8二飛▲6三飛成△同金▲同角成△5二歩▲7四歩でどうか。先手が優勢にも見えるが、やはり△8九飛と打ち込まれるリスクがあるので覚悟が必要な踏み込みである。 46 3一玉(41) (22:00/05:07:00) *豊島は△3一玉と寄った。2筋がカベになっているが、△3三桂が入れば玉の懐が広がる。 47 4九玉(58) (14:00/05:05:00) *藤井は▲4九玉と引く。あくまで▲4八金を生かした駒組みを試みる。▲4九玉を見た藤井猛九段の表情が緩む。「先手は▲3八玉〜▲2七歩と駒組みを進めると思います。この形は2筋が弱点ですが、後手の歩が2二にいますので攻められにくい形です。ですので▲2八銀と上がる必要はありません。3八玉−4八金−3九銀がいい形なのです。後手は△7三銀〜△6四銀〜△7三桂と攻撃陣を整えてくることになると思いますが、先手は▲7六銀と上がって▲6六歩〜▲6五歩と撃退しにいきます。玉が5八にいると6筋の歩が突きにくいので、▲4九玉はその準備です。振り飛車っぽくなってきたので先手を持ってみたいです」と藤井猛九段は解説する。 *青野九段も先手持ちの見解を示す。「私は▲3八金〜▲4八銀と組み直すと思っていましたが、▲4九玉はなかなかの構想でしたね。先手は▲3八玉、▲2七歩、▲7六銀、▲6六歩など指したい手がたくさんあります。藤井さんのほうは歩を2枚持った振り飛車のような感じですし、玉を囲ってじわっと相手に圧力を掛けていけば歩得が生きる展開になります。後手としては歩損をしているので戦いを起こしたいところですが、その手段が難しいかもしれません。後手を持ってみたいという棋士は少ないと思います」と語った。 48 7三銀(72) (31:00/05:38:00) *豊島の指し手は△7三銀。31分の考慮で指された。後手は小刻みに時間を使ってバランスを崩さないように細心の注意を払っている。 49 7六銀(87) ( 7:00/05:12:00) *11時47分の着手。 *藤井も左銀を押し上げる。▲7六銀は△7三銀に対抗する一手だ。封じ手開封以降、互いに陣形を整備するじりじりした展開が続いている。 *12時、この局面で豊島が12分使って昼食休憩に入った。ここまでの消費時間は▲藤井5時間12分、△豊島5時間50分。昼食の注文は藤井が天ぷら蕎麦・冷、アイス椿茶。豊島があいのせ重。あいのせ重は蒲焼きと白焼きがミックスされたうな重。対局は13時に再開する。 *勝又清和七段が控室を訪れた。「先手は横歩取りの後手番で出てくるような陣形をしています。横歩取りの後手は歩損をしますが、本局の先手は歩得をしていますので、イメージ的にはいい感じがしますよね」と話す。 50 9五角打 (24:00/06:02:00) *控室の検討陣が声を上げた。豊島は24分の考慮で△9五角と打った。角を手放す決断の一着である。検討陣の継ぎ盤が激しく動き出す。▲7六銀に代えて▲3八玉と上がった変化で後手が攻めるなら△9五角の筋かという話は出ていたのだが、後手はこのタイミングで角打ちを繰り出した。 51 8九飛(86) (28:00/05:40:00) *藤井は飛車を引いた。▲9六飛と頑張る手も考えられたが、下段飛車のほうが広くて安定している。 52 7五歩(74) ( 0:00/06:02:00) *△7五歩は▲同銀に△7六歩が狙い。▲6五銀には△6四歩で、7六の地点を執拗に狙っていく。以下▲7四歩は△6二銀と引いておく。角を追う▲9六歩には△7七角成▲同金△7六歩で▲角△銀桂で後手が2枚換えの駒得になる。 53 8七銀(76) ( 0:00/05:40:00) *したがって先手は8七に銀を引く。 * *※局後の感想※ *「歩損で角を手放しているので、模様はよくてもけっこう大変なのかなと思いました」(豊島) 54 6四銀(73) (10:00/06:12:00) *豊島は△6四銀と上がる。△9五角からの継続手である。継ぎ盤の前に座る中村太八段はここから▲9六歩△6二角▲6六歩と進めた。後手は打った角を使うべく△4四角とすると先手に▲6七金と活用される。以下△5五銀には▲6九飛と6筋を受けられる。後手が攻めるなら△8六歩▲同銀△7六歩▲同金△7五歩だが、▲同銀△同銀▲同金△6六角▲7六金△4四角に▲8四歩の反撃が厳しいかもしれない。△7五歩が後手の狙いだが、▲8三歩成と攻め込まれて、以下△7六歩▲8二と△7七角成▲3八玉△6七馬に▲6九飛でどうか。△6八銀が厳しそうだが、▲同飛△同馬▲7二と△5一金▲7一飛で先手が優勢になるようだ。後手玉は2筋のカベが響く格好だ。 *佐藤紳哉七段が控室を訪れた。関係者にあいさつをすると早速、継ぎ盤の前に座る。「私も先手を持ってみたいです。後手としては玉の位置が4筋の先手に比べて深いので、7筋方面で戦いになれば玉の遠さが生きてきます。6四銀を中央に使って先手の8七銀が遊ぶような展開になるのが理想です」と話す。 *続いて西山朋佳女流三冠が控室へ。あいさつをしてから千田八段と継ぎ盤を挟む。 55 6六歩(67) (34:00/06:14:00) *藤井は▲6六歩と突いた。△7六歩の筋で桂が攻められたときに▲6五桂と跳ねられるようにした。歩を突いて桂の土台を事前に作っておく。 56 6二角(95) ( 9:00/06:21:00) *豊島は角を6二に引く。後手はこの角が働くかどうかで今後が決まる。視界が開ける展開に持ち込みたい。 57 6七金(78) ( 3:00/06:17:00) *金を6七に上がって7筋を手厚くする。じりじりした展開が続く。 58 4四角(62) ( 1:00/06:22:00) *角の二段活用を図る。端に打った角を中央に転換する。西山女流三冠は「先手が振り飛車っぽい形になりましたので、通常の居飛車に比べると感覚が違うと思います。先手がどういった指し回しを見せるのか。じっくりした戦いになる可能性もありますが、選択権は後手にありそうですので、どんな展開になるのでしょうか」と話す。 *15時、2日目午後のおやつは藤井がオレンジジュース、豊島がリンゴジュース。 59 3八玉(49) (19:00/06:36:00) *藤井は▲3八玉と上がる。相振り飛車の金無双のような囲いだ。▲4九玉と引いたからには指しておきたい一手である。ただし、桂を渡すと△2六桂〜△3八歩で3九の銀を取られてしまうので、この筋には細心の注意を払いたい。 60 3三桂(21) ( 6:00/06:28:00) *左桂を活用する。後手玉は桂を跳ねたことで2筋のカベが解消され、懐がぐっと広くなった。青野九段は「後手は角を手放しましたが、代償に右銀を6四に繰り出すことができました。焦らずにじっとしていられるのがすごいですよね。先手も下手に動くと7、8筋にキズがありますので、タイミングをうかがっています。お互い相手にプレッシャーを掛けているような展開です」という。 *15時33分、藤井の通算消費時間が7時間に到達した。残りは2時間。豊島の残り時間は2時間32分。お互いに神経をすり減らすようなじりじりした展開が続く。 *伊藤真吾六段が控室を訪れた。東京対局とあって棋士が集まってきた。 61 5六歩(57) (42:00/07:18:00) *藤井の指し手は▲5六歩。42分の考慮で指された。▲5六歩は△5五銀を防いだ手だが、△8六歩▲同銀△7六歩▲同金△7五歩の変化になったときに▲5六歩がどう影響を及ぼすのか。△7五歩以下、▲同銀△同銀▲同金△6六角▲7六金に△4八角成と切る手が生じているからだ。実際は▲7六金に後手は△7二飛と金取りに寄られて、以下▲7四歩△同飛▲7五歩に△4八角成▲同銀△2四飛のように飛車を活用される危険性がある。藤井はこの筋を大丈夫と見て▲5六歩と突いたと思われるが、先手玉が薄くなるので怖いところではある。 *藤井猛九段は継ぎ盤の駒を動かす。△8六歩▲同銀△7六歩▲同金△7五歩▲同金△6六角▲7六金△4四角。以下▲7五歩は△5二飛が嫌みとなるので先手は▲6六歩とするが、△7五歩▲同金△6六角▲7六金△4四角▲6六歩△7五歩……の順は千日手になってしまう。「▲7六同金には△5二飛や△3五角も有力で、後手が千日手にするか選べますね。後手が面白くなってきたんじゃないですか」と藤井猛九段はいう。 62 5一金(61) (11:00/06:39:00) *豊島の指し手は△5一金。離れていた右金を5筋に寄って玉を固める。万全の態勢にしてから藤井猛九段が解説した攻めを繰り出すのかもしれない。 *この筋を見せられた先手はどう指すのか。▲6五歩△7三銀▲4六角が継ぎ盤に並んだが、△6四歩▲同歩△6二飛で逆襲される。勝又七段は単に▲4六角を予想している。 63 4六角打 (14:00/07:32:00) *藤井は▲4六角と据えた。▲6五歩△7三銀▲7四歩が狙いとなる。しかし、▲4六角にはやはり△8六歩▲同銀△7六歩の筋が気になるようだ。以下▲6五桂には△7二飛と寄られて、▲8四歩に△7七歩成▲同銀△6五銀▲7六歩△2六桂▲2七玉△3八歩▲6五歩△3九歩成▲同飛△7八銀▲6八金△8七銀成▲7八銀△7七成銀▲同銀△8八銀▲7八銀△7七銀成▲同銀△8八銀……と進むと千日手になってしまう。「▲4六角は攻められてしまうので不安ですね」と勝又七段。上記の変化は後手玉の堅さが生きてくる。先手としては△2六桂〜△3八歩で攻められる展開は避けたいところだろう。 *16時37分、豊島も通算の消費時間が7時間に。残りは2時間。藤井の残り時間は1時間28分。 *控室の検討陣から後手持ちの声が聞かれ始めている。千田八段もその一人。「後手は少なく見ても互角以上だと思います。後手持ちと見ているのは私が居飛車党ということも大きいですね。先手の形は特殊な構えで、私には指しこなせません。▲5六歩のところで▲2七歩のように自陣のキズを消しておかなかったのは藤井さんらしくないと感じました」と話す。 *豊島は左手を後頭部に当てて盤上を見下ろす。気のせいかここにきて背筋が伸びてきたようにも見える。 *17時、この局面で豊島が43分使って30分間の夕休憩に入った。ここまでの消費時間は▲藤井7時間32分、△豊島7時間22分。対局は17時30分に再開される。 *両対局者には軽食(おにぎり)が出された。おにぎりの具材は「梅」、「ちりめんじゃこと大葉」。デザートは「リンゴ コンポート(青森県産りんご)」、「とちおとめ(栃木県産)」、「ブルーベリー(チリ産)」。豊島はリンゴジュースを注文している。 *藤井は早めに食事を済ませて対局室に戻ってきた。食い入るように盤上を見つめている。 64 5二飛(82) (43:00/07:22:00) *17時30分、対局が再開した。 *豊島は△5二飛と飛車を中央に転回した。狙いは△8六歩▲同銀△7六歩▲同金△5六飛。以下▲5七歩には△4六飛▲同歩△6七角で後手の攻めが続く。千田八段は「手の流れは▲6五歩でしょうか」と話す。△7三銀には▲7四歩△8二銀で繰り出した銀を押し込まれるが、「これもあるかもしれません」という。続けて「▲7四歩に△同銀と取って▲9一角成にそこで△8六歩▲同銀△7六歩▲同金△5六飛と攻める筋もあります。後手としては▲7四歩に△同銀と応じると香を取られて先手に柔軟な受けを与えることになりますので、形勢はなんともいえません。ただし、先手側から見ると自信が持てません」と解説する。 * *※局後の感想※ *△5二飛に代えて△8六歩が検討された。以下▲7八銀△7二飛▲8六飛△7六歩▲同金△7五歩▲6五金△7六歩▲7三歩△同飛▲7四歩△7七歩成▲7三歩成△7八と。▲飛△銀桂の交換で後手が駒得だが、飛車を渡したのもそれなりに大きく、激戦のようだ。 65 6五歩(66) (27:00/07:59:00) *藤井は27分の考慮で▲6五歩と突いた。千田八段が解説した歩突きである。 66 7三銀(64) ( 0:00/07:22:00) *△6五同銀は▲同桂で後手が銀損してしまう。銀を引くしかない。 67 8四歩(85) ( 0:00/07:59:00) *銀を引かせて▲8四歩。次に▲8三歩成が狙いで、銀を引かせたことで銀当たりになる。後手に銀を引かせたので前述した△8六歩▲同銀△7六歩▲同金△7五歩の筋は消えている。△8四同銀は▲9一角成と香を取ることができる。 68 8六歩打 ( 4:00/07:26:00) *それでも豊島は△8六歩を決行した。▲8六同銀は△7六歩で、▲同金は△5六飛が金取りになる。 *藤井の残り時間が1時間になった。記録机に持ち時間早見表が出された。1から60までの数字が書かれた用紙で、持ち時間を1分使うごとに60から1つずつ数字が消され、残り時間が一目でわかるようになっている。 69 同 銀(87) ( 4:00/08:03:00) *藤井は強く▲8六同銀と歩を取った。 70 7六歩(75) ( 1:00/07:27:00) *豊島は△7六歩と突いた。ここにきてついに後手の猛攻が始まった。 *控室には野原未蘭女流初段、今井絢女流初段の姿も。激しく動く継ぎ盤を見ている。 71 8五桂(77) ( 0:00/08:03:00) *▲7六同金は△5六飛の金取りが受けにくい。▲8五銀と金にヒモをつけると△4六飛▲同歩△5六角の王手飛車を与える。▲8五桂以下、△8四銀▲9一角成△8五銀▲同銀△7七歩成▲5七金寄△2六桂▲2七玉△3八歩が予想される。▲3八同銀は△同桂成▲同玉△6七と▲同金△7八銀が飛車と金の両取りになる。 72 8四銀(73) (13:00/07:40:00) *豊島は13分使って△8四銀と歩を取った。 73 9一角成(46) ( 0:00/08:03:00) *角筋が通った以上は▲9一角成と香を取りたい。 74 8五銀(84) ( 0:00/07:40:00) *銀で桂を取る。▲8五同銀に△7七歩成を見ている。後手は桂を持ったので△2六桂〜△3八歩で先手玉を薄くできる。 75 同 銀(86) ( 0:00/08:03:00) *先手は銀を取り返す。△7七歩成が自然だが、単に△2六桂もあるのだろうか。 76 7七歩成(76) ( 4:00/07:44:00) *4分使って歩を成った。後手は銀損に近いので、と金と△2六桂の筋で大きな利を得たい。 77 5七金(67) ( 0:00/08:03:00) *金を逃げる。先手は駒得を主張したい。 78 7八と(77) ( 1:00/07:45:00) *飛車取りにと金を入る。△2六桂はいつでも打てるので、後手としては切り札にして相手にプレッシャーを掛けたい。 79 4九飛(89) ( 5:00/08:08:00) *飛車を4九に逃げる。玉飛接近の格好でお世辞にもいい形とは言えない。玉と飛車を同時に攻められる危険性があるからだ。継ぎ盤には△6八と▲6四歩△同歩▲8一馬△7七角成の順が並ぶ。後手は次に△5九とで飛車を取ることができる。後手は銀香損だが、と金と馬の攻めが厳しそうだ。ただ。先手は▲4六香や▲5五香、桂を持っての▲2四桂があり、激戦と見られている。 80 6八と(78) ( 8:00/07:53:00) *と金を活用する。後手は△7七角成〜△5九とを目指す。 *飛車が取られそうな先手はどう指すのだろうか。▲6四歩△同歩に▲8一馬の変化を紹介したが、△6四同歩に桂を取らず▲6九歩もあるようだ。以下△4五桂打には▲6八歩とと金を取って、△5七桂成▲同金△4五桂に▲6七金でどうか。△3六歩から攻めが続きそうだが、▲8一馬と桂を取っておけば、先手は駒得を主張できる展開になるかもしれない。 * 81 6四歩(65) ( 9:00/08:17:00) *藤井は▲6四歩と突いた。検討でも挙がっていた手筋の突き捨てである。▲8一馬と桂を取ったときに馬のラインが自陣まで通す意味である。また、6筋の歩が切れると▲6九歩の受けが利くかもしれない。先手にとって損の少ない一手といえよう。 *19時3分、豊島の残り時間も1時間になった。藤井の残りは43分。 82 同 歩(63) ( 7:00/08:00:00) *△6四同歩は利かされだが、▲6三歩成を許すわけにはいかない。 *先手は▲6九歩で勝負するのだろうか。藤井の次の一手に注目が集まる。 *藤井の残り時間が30分を切った。 83 6九歩打 (14:00/08:31:00) *藤井の指し手は▲6九歩。やはりこの手が粘り強い一手のようだ。継ぎ盤には△2六桂▲2七玉△3八歩▲同銀△同桂成▲同玉△4五桂▲4六金△5九銀の順が並んだ。以下▲4五金には△6六角▲6八歩△4八銀成▲同飛△5六飛でどうか。 84 9三桂(81) ( 6:00/08:06:00) *豊島の指し手は△9三桂。取られそうな桂を逃げながら銀取りになっている。桂を渡すと▲2四桂が厳しいと見ているのだろう。予想外の一着に控室で驚きの声が漏れた。 85 7四銀(85) ( 0:00/08:31:00) *銀を逃げながら後手陣に近づける。▲6三銀成△5四飛▲6四成銀△5二飛▲6三成銀△5四飛▲6四成銀△5二飛といった千日手の順がちらつく。 86 2六桂打 ( 1:00/08:07:00) *ここで後手は切り札の△2六桂を放った。 87 2七玉(38) ( 0:00/08:31:00) *玉を上がるしかない。 88 3八歩打 ( 0:00/08:07:00) *△2六桂からの継続手。 89 同 銀(39) ( 0:00/08:31:00) *▲3八同銀と応じる。 90 同 桂成(26) ( 0:00/08:07:00) *桂で銀をはがす。 91 同 玉(27) ( 0:00/08:31:00) *先手玉は3九の銀を失った。守備力が下がった。 92 5八銀打 ( 0:00/08:07:00) *取った銀を5八に打ち込む。と金が取られる前に飛車を取りにいく。 93 6三銀成(74) ( 4:00/08:35:00) *藤井は4分の考慮で▲6三銀成とした。先手は千日手の順に持ち込もうとしているのかもしれない。 94 4九銀(58) ( 0:00/08:07:00) *豊島はノータイムで飛車を取る。 95 同 金(48) ( 1:00/08:36:00) *金で銀を取り返す。▲6八歩とと金を取り切るまでは辛抱が必要だ。継ぎ盤には△4五桂▲5二成銀△同金▲2四桂△5七桂不成▲1二銀△同香▲1一飛△2一金▲4一銀といった激しい寄せ合いの順が並ぶ。以下△2三銀には▲5二銀成△1一金▲4一金△2一玉▲3二桂成△同玉▲6四馬といった寄せが見える。▲1二銀〜▲1一飛が豪快な寄せで、△2一金には堅固だった後手玉を一気に追い込むことができる。後手の△5七桂不成では△5七桂成とする順も有力で、継ぎ盤の駒が動き続けている。 * 96 3六歩打 (11:00/08:18:00) *豊島の指し手は△3六歩。薄くなった玉頭を直接攻めにいった。▲6八歩には△3七歩成が厳しく、▲同玉は△4五桂が王手金取りになる。また、▲3七同桂も△3六歩で後手の攻めが続く。 97 同 歩(37) ( 1:00/08:37:00) *したがってここは手を抜けない。 98 4五桂(33) ( 0:00/08:18:00) *3筋に歩を打ち捨ててから△4五桂と跳ねた。後手はいつでも△3七歩のタタキが可能になった。 99 3四香打 ( 1:00/08:38:00) *藤井は1分の考慮で▲3四香と打つ。一歩も引かない寄せ合いに突入した。△3三歩と打たせて▲4六金と上がれば△3七歩のタタキがないということだろうか。 * *※局後の感想※ *▲3四香に代えて▲4六金は△5八と▲同金△3七歩▲同桂△同桂成▲同玉△3九飛▲4八玉△1九飛成で後手よし。 100 3三歩打 ( 1:00/08:19:00) *この手で100手に達した。△3三歩までの消費時間は、▲藤井8時間38分、△豊島8時間19分。 *守備金を取らせるわけにはいかない。歩を打って金取りを防ぐ。▲5二成銀△同金▲6一飛には△5一飛と合わせて大丈夫ということのようだ。 101 4六金(57) ( 2:00/08:40:00) *後手を歩切れにさせてから▲4六金と上がった。△3四歩には▲5二成銀△同金▲4五金で先手玉の上部がすっきりする。 *後手は先手玉にどう迫っていくのか。△5七桂成でよければ話は早いが、▲5二成銀△同金に▲8一飛の追撃がくる。が、▲8一飛にも△5一飛の受けがあって先手が大変かもしれない。控室では「名局賞」のワードが聞かれるように、両者が一歩も引かない息の詰まる大激戦が展開されている。 *藤井はおしぼりで顔を入念に拭う。最終盤に向けて鼓舞しているようだ。 102 5七桂(45) ( 8:00/08:27:00) *豊島の指し手は△5七桂不成。金取りに桂を飛び込んだ。「△5七桂成はそこで何を指されるかわからないので怖いですけど、有力だったと思います」と検討中の伊藤真六段はいう。 103 4八金(49) ( 0:00/08:40:00) *大事な守備金を逃げる。 104 3四歩(33) ( 0:00/08:27:00) *香を取って駒を蓄える。▲6八歩に△5九飛と打つのが△5七桂不成を生かす攻めになるだろうか。 105 6八歩(69) ( 4:00/08:44:00) *藤井はと金を取った。後手の攻め駒を少しずつ取り除いていく。継ぎ盤では△2三香▲5二成銀△同金▲8一飛△5一飛▲6一銀△6二金▲5二銀打といった順が並ぶ。 106 5九飛打 ( 3:00/08:30:00) *豊島は飛車を打ち込む。5七桂を生かして寄せに出る。次に△2六角を見ているようだ。 *先手は攻めるのか、それとも受けに回るのか。攻めるなら▲6四馬が目につくが、△6一香のカウンターがうるさいかもしれない。受けるなら▲3七銀や▲5八銀だが、受けきれるかどうかは紙一重だ。 *藤井の残り時間が10分になった。秒読みが始まる。豊島はまだ30分も残している。 107 2四桂打 ( 9:00/08:53:00) *藤井の指し手は▲2四桂。攻め合いに活路を見いだす。桂を打って急所の金を取りにいく。しかし、控室では△2三香が強烈な切り返しと見られている。以下▲5二成銀△2四香▲5一成銀△2一玉で後手がよさそうといった声が聞かれる。後手は△2六桂の一点狙いだが、この王手が厳しそうだ。 108 2三香打 ( 4:00/08:34:00) *やはりこの香打ちが絶好のカウンターになっているようだ。 109 5二成銀(63) ( 0:00/08:53:00) *藤井は飛車を取る。△5二同金は前述した▲1二銀△同香▲1一飛の寄せがある。△2四香と桂を外すのが有力のようだ。 110 同 金(51) ( 1:00/08:35:00) *豊島の指し手は△5二同金だった。▲1二銀の筋は大丈夫なのだろうか。 111 8一飛打 ( 1:00/08:54:00) *8一に飛車を打つ。▲1二銀は△同香▲1一飛△2一銀▲1二桂成に△4九銀で2三香の利きがあるため、先手玉が詰む。 112 5一銀打 ( 1:00/08:36:00) *5一に銀を打って王手を防ぐ。 113 3二桂成(24) ( 0:00/08:54:00) *打った桂で金をはがす。 114 同 玉(31) ( 0:00/08:36:00) *後手は金をはがされたが、金銀3枚に2三香がよく利いていて耐久性がある。 115 4五金(46) ( 0:00/08:54:00) *角取りに金を上がる。玉の退路を開きつつ、▲6四馬と引いたときに馬の利きが自陣まで通るようにした。とはいえ、苦戦を強いられているようだ。 116 2六桂打 ( 5:00/08:41:00) *豊島は5分の考慮で△2六桂と王手に打った。 117 3七玉(38) ( 0:00/08:54:00) *玉を3七に上がる。 118 9九角成(44) ( 0:00/08:41:00) *王手を利かしてから△9九角成と角を逃げながら香を取る。 119 6四馬(91) ( 2:00/08:56:00) *藤井は貴重な2分を使って▲6四馬と引く。互いに盤面を大きく使う展開になっている。 120 3九飛成(59) ( 2:00/08:43:00) *△3九飛成と飛車を成って先手玉に迫る。▲4六玉△4八竜▲3五歩に△4四香と打つのは、▲3三銀△同銀▲3一金がある。 *したがって△4四香ではなく△5三金打が手厚い好手となる。 121 4六玉(37) ( 0:00/08:56:00) *玉を上部に逃げ出す。しかし、△4八竜が5七の地点を押さえて厳しい。 122 4四香打 ( 0:00/08:43:00) *豊島の指し手は△4四香。金を取らずに香を打つ。田楽刺しで厳しそうだが、控室に悲鳴が……。 * *※局後の感想※ *△4四香が敗着になった。代えて△4八竜と金を取れば後手の勝ち筋だった。藤井は感想戦で▲6三銀△4四香▲4一銀△2一玉▲8八歩△6八竜▲6六歩△4五香▲5五玉△9八馬▲3二金△1二玉▲4二馬と後手玉に迫る順を示したが、△5四歩▲同銀成△同馬▲同玉△6三銀から先手玉が詰む。本譜は▲5七玉と桂を取られて先手玉が捕まらなくなってしまった。「△4八竜と金を取られたときに、こちらに手段があるかどうかと思っていたんですが、詰めろをかけるのは難しいので、ちょっとこちらが足りない形なのかなと、対局中の感触としては思っていました」と藤井。 123 5七玉(46) ( 0:00/08:56:00) *藤井はノータイムで▲5七玉と桂を取る。後手は△4八竜と金が取れなくなった。左辺からの入玉が見えてきたか。 * *※局後の感想※ *「桂を取ったあたりで頑張れる形になったのかなとは感じました」と藤井。豊島は「玉形に差があるのでチャンスの局面もあったと思うが、△4四香と打って▲5七玉とされたのはひどかったですね」と反省する。 124 4五香(44) ( 0:00/08:43:00) *打った香で金を取る。「すっぽ抜けてしまいましたね」という声が響く。なにかしらの錯覚があったのかもしれない。 125 8八歩打 ( 0:00/08:56:00) *歩を打って馬のラインを止める。評価値的には限りなく五分に近いようだが、先手玉が捕まらず入玉が現実味を帯びてきたかもしれない。先手は8一飛が攻防によく利いている。 126 7九竜(39) ( 5:00/08:48:00) *豊島は△7九竜と竜を7筋に。先手の入玉を阻止しにいく。 127 3七桂(29) ( 0:00/08:56:00) *藤井の指し手は▲3七桂。取られそうな桂を活用する。控室に「いい手すぎる」といった声が響く。桂を跳ねたことで、いきなり▲3三銀と打って後手玉が詰む変化が生まれるかもしれない。 *後手は△8八馬と引ければいいが、▲同飛成△同竜▲3三銀△同玉(△3三同銀は▲3一金まで)に▲5五馬が王手竜取りになって後手がまずい。 *豊島も残りが10分に。秒読みが始まった。 * *※局後の感想※ *「桂を跳ねて、なんとか駒を活用しながら攻めの形ができたので、初めてよくなったのかなと感じました」と藤井。 128 7七竜(79) ( 5:00/08:53:00) *竜を引いて王手を掛ける。 129 6七銀打 ( 0:00/08:56:00) *銀を打って王手を受ける。先手玉が捕まらなくなった。後手に有効な手がなくなったかもしれない。 130 6六金打 ( 4:00/08:57:00) *豊島の指し手は△6六金。▲5八玉△6七金▲同歩△8八竜▲同飛成△同馬として、馬の利きで3三をカバーしにいく。 131 5八玉(57) ( 0:00/08:56:00) *玉を5八に引く。 132 6七金(66) ( 0:00/08:57:00) *打った金で銀を取る。 133 同 歩(68) ( 0:00/08:56:00) *しかし、前述した△8八竜は▲同飛成△同馬に▲4五桂がぴったりで、後手は一手一手になっているようだ。 134 8八竜(77) ( 0:00/08:57:00) *△8八竜で馬を使って粘りにいく。 135 同 飛成(81) ( 0:00/08:56:00) *先手は竜を取るしかない。 136 同 馬(99) ( 0:00/08:57:00) *馬を自陣に利かす。が、▲4五桂が厳しい。 137 4五桂(37) ( 0:00/08:56:00) *やはりこの手が絶品のようだ。急所の3三に利かしているため、後手玉は▲3三香以下の詰めろになっている。 138 4四銀打 ( 0:00/08:57:00) *銀を打って踏ん張る。 139 8二飛打 ( 0:00/08:56:00) *藤井の指し手は▲8二飛。8八の馬取りになっている。△7八飛の王手には▲6八金と弾くことができる。 140 9八飛打 ( 0:00/08:57:00) *飛車を9八に打つ。しかし、▲4一銀の王手が強烈のようだ。 141 4一銀打 ( 1:00/08:57:00) *藤井の指し手は▲4一銀。△4一同玉は▲5二飛成から後手玉が詰むようだ。 *豊島は一分将棋になった。 *この局面で豊島が投了した。終局時刻は21時22分。消費時間は、▲藤井8時間57分、△豊島8時間59分。藤井が勝ち、初防衛に向けて好スタートを切った。第2局は4月23、24日の両日に千葉県成田市「成田山 新勝寺」で行われる。 *投了以下、▲4一銀に△同玉は▲5二飛成△同玉▲6三金△4一玉▲5二金打△同銀▲同金△同玉▲6三銀△4一玉▲5二金△3一玉▲4二金△2一玉▲3一金△1二玉▲2一銀まで後手玉は詰み。▲4一銀に△2一玉と逃げれば後手玉は詰まないが、▲3二金△1二玉に▲4二馬で受けがなくなる。 * * 142 投了 ( 2:00/08:59:00) まで141手で先手の勝ち